2017 Fiscal Year Research-status Report
車椅子マラソンにおけるハンドリム径や取付間隔が発揮トルクに及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
16K01722
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Research Institution | The Hyogo Institute of Assistive Technology |
Principal Investigator |
中村 俊哉 兵庫県立福祉のまちづくり研究所, その他部局等, 技師 (20426547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 良昭 兵庫県立福祉のまちづくり研究所, その他部局等, 研究員 (00426545)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 車椅子 / 障害者スポーツ / 車椅子マラソン / トルク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、車椅子マラソン競技者の競技力向上を支援するために、ハンドリムのパイプ径、リム径及び取り付け間隔といったハンドリムの設定が、競技者が発揮できるトルクに及ぼす影響を明らかにすることである。 本研究の研究期間は3年間であり、初年度であった昨年度では、トルクの計測が可能な計測用ホイールの開発を開始した。我々が開発を試みた計測用ホイールは、ハンドリムとホイールをネジ止めにより接合する4箇所にひずみゲージを貼付し、ハンドリムを漕いだときに生じる接合部のひずみ量からトルクを推定するものである。しかし、開発中の計測用ホイールでは、競技者が強いインパクトを与える漕ぎ方をした場合、計測されるトルク信号の直流成分に増減が生じ、正確なトルクの計測が困難であることが判明した。この直流成分の増減は、インパクトにより接合部にズレを起因とするひずみが生じるためと考えられた。 そのため、本年度では、まず、インパクトによる接合部のズレを抑える方法について検討を行ったが、有効と考える方法が得られなかった。そのため、ホイール毎に回転するローラを備えたローラ台を利用した計測に移行することを決定した。ローラ台での計測を行うために、ローラの慣性モーメント計測システムを構築し、ローラの慣性モーメントを求めた。また、車椅子マラソン競技者を被験者として確保することが、研究当初の予定よりも困難であったため、本年度では、一般的な体格の健常者でも乗車可能なマラソン用車椅子を製作した。 最終年度となる来年度では、本年度に構築したローラの慣性モーメント計測システムから求めたローラの慣性モーメントを用いて、ローラもしくはホイールの回転速度の変化から被験者が発揮しているトルク及びパワーを求めることで、ハンドリムの設定が発揮できるトルクに及ぼす影響を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画では、我々が既に所持していた計測用ホイールを活用することで、計測システムの構築に必要な期間の短縮を図り、研究開始から2年目となる本年度では、被験者を対象とした計測を行う予定であった。しかし、計測用ホイールによる計測システムでは、強いインパクトを与える漕ぎ方を行うと、計測されるトルクが不正確になることが、昨年度に判明した。そのため、本年度では、被験者を対象とした計測ではなく、計測システムの再構築を行うこととなった。 計測システムを検討した結果、我々が考えた対策を行っても研究期間内に、計測用ホイールを用いてインパクトの強い漕ぎ方を行った場合のトルク計測が行えるようになる可能性が低いと判断したため、計測用ホイールを用いてトルクを直接的に計測する方法から、ローラ台を用いて、ローラもしくはホイールの回転速度の変化から、トルクを推定する方法に変更することにした。この推定方法では、ローラ自体の慣性モーメントが計測システム全体の慣性モーメントと仮定して、ローラの回転速度の変化からトルクを推定する。したがって、ローラの慣性モーメントを求める必要がある。本年度では、慣性モーメント計測システムを構築した。 また、車椅子マラソン競技者の多くは日中に仕事を持っており、被験者の確保が当初予定よりも困難であった。被験者確保のために、一般的な体型の健常者でも乗車可能なマラソン用車椅子を製作した。 最終年度となる来年度では、ローラ台を用いた計測システムと健常者も乗車可能なマラソン用車椅子を用いた計測を行うことで、研究の巻き返しを図る。
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Strategy for Future Research Activity |
研究当初の予定では、我々が保持していた計測用ホイールを活用し、トルク計測を行うことを考えていた。しかし、研究初年度に強いインパクトが生じる漕ぎ方を行うと、計測されたトルクの直流成分に変動が生じることがわかった。そのため、トルクの計測方法を、ローラ台を用いて回転速度の変化から推定する手法に変更することにし、本年度では計測システムの構築を行った。また、被験者数と計測回数を確保するために、健常者でも乗車可能なマラソン用車椅子も製作した。 研究期間の最終年度となる来年度では、昨年度までに構築した計測システムと製作したマラソン用車椅子を用いた計測によりデータを集める。また、被験者を車椅子マラソン選手に限らず健常者も対象とすることで、被験者数及び計測回数の確保を図る。 収集したデータに対する解析プログラムは、計測システムの変更があったことから本年度中に完成させることはできなかった。そのため、来年度ではデータ収集と並行して解析プログラムの修正を行う予定である。解析プログラムの修正については、我々が以前に行った異なる研究で使用していたものを参考とすることで、効率化を図る。最終年度であるため、計測を円滑に行い、計測システムの故障により計測が停滞しないようにするために、同等の計測システムを新たに構築し計測システムの2重化を図る。また、新たに構築した計測システムも可動させることで、遅れている研究計画の巻き返しを図る。
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Causes of Carryover |
研究初年度に我々が保持している計測用ホイールでは、トルク計測が困難であることが判明したため、本年度では、計測方法の再検討を行った。その結果、ローラ台を用いてローラの回転速度の変化からトルクを推定する手法を採用することにしたが、計測に必要なローラ台に我々が所持しているローラ台が利用できたため、新たにローラ台自体を購入する必要がなかった。また、被験者数と計測回数の確保のために製作したマラソン用車椅子でも後輪に我々が所持している計測用ホイールを活用したため、計測システムの変更に伴う費用を本年度当初の予想よりも抑えることができた。また、計測システムの構築に時間を要し、被験者を対象とした計測を行うことができなかったため、計測に伴う費用が生じなかった。これらが次年度使用額の生じた理由である。 次年度使用額は、計測が停滞しないように計測システムの2重化を行うことや、計測に要する費用、計測システムの改修・保守に充当する。
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