2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の長期間水中運動の実践とトレーニング効果に関する研究
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16K01745
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 健 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (10279002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巽 樹理 追手門学院大学, 基盤教育機構, 講師 (00769648)
斎藤 辰哉 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (60758085)
小野寺 昇 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (50160924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水中運動 / トレーニング / 高齢者 / 動脈スティフネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、長期的な水中運動の影響を明らかにすることを目的としており、具体的には、3年間のトレーニング期における筋力、バランス、持久力等の体力、動脈スティフネス、日常の歩数や身体活動レベルに及ぼす影響を確認する。 平成28年度は、準備・調査期間とし、水中運動・トレーニングに関する情報収集と全国の運動型健康増進施設を対象としたアンケート調査を実施した。92施設から回答を得て、分析の結果、高齢者の水中運動プログラムは、アクアエクササイズ系(音楽に合わせて動作を行う)が多く、頻度は週に2、3回、1回約40分で実践されていた。また、水泳・水中運動が運動型健康増進施設の重要なプログラムとして認識されており、今後の高齢社会において介護予防に向けた実践・活用が促進される可能性が示唆された(日本生涯スポーツ学会第18回大会にて発表11/5)。平成28年度は、水中運動の強度測定とトレーニング試行(水中運動群15名/71.5±4.3歳、陸上運動群19名/72.2±5.6歳)も行った。強度測定では、水中運動の基本となる普通歩行、大股、横、後ろ、前方キック、ツイスト、シザース動作(その場で左右交互に前後開脚)、ジョグ(水中でのジョギング動作)の8つを、休憩を挟みながら行った。各動作中の心拍数を計測し、「220-年齢」を基準とした推定最高心拍数に対する相対運動強度を測定した。ジャンプ系のシザースとジョグが70%を超え、他は62~68%の強度であった。また、高齢のシンクロナイズドスイマー(20名、平均70歳、女性)の測定では、3分半の演技中、112拍/分を維持し、80%強度となっていた。ジョグ系運動やスカーリング動作を伴うシンクロは、高齢者にとって高強度運動となることが明らかとなった。トレーニング試行(水中群6回、陸上群7回)では、水中と陸上とも筋力(上体起こし)と持久力(6分間歩行)における有意な改善効果が認められた(p<0.05)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トレーニング部分に関しては、調査と情報収集、ならびにトレーニング試行を通して参加高齢者が可能なエクササイズをプログラミングできている。インストラクターの確保についても順調である。被験者数の目標を各群30名としていたが、水中運動群については、25名に止まっているため、早い段階で数名の追加を行いたい。水中運動は、茨木市のプールを借用しているため、時間設定や都度の利用で若干の不便さがあるものの、市及びプール指定管理会社の協力を得て、各回の運営が可能になっている。平成29年の7,8月は、一般客が多く、集団での専用利用ができないため、指定プログラムによる自主練習のみとなる。また、9月は、プールの改修工事が予定されており、当該プールの利用ができない。そのため、現在、市内の他の公共温水プールと9月の利用調整を進めている。陸上運動については、所属大学の体育館を利用しており、利用上の不都合な状況は発生していない。両群とも週に2回、1回45分のエアロビックエクササイズを基本としている。 各指標の測定について、体力測定は、文部科学省の新体力テストのプロトコルに基づいて、握力、上体起こし、10m障害物歩行、6分間歩行、開眼片足立ち、長座体前屈の6項目について測定を行っている。現在、トレーニング試行の事前測定(2月末)と事後測定(3月下旬)のデータ、ならびに5月初旬(水中運動群5/12開始, 陸上運動群5/8開始)から始まったトレーニング期の事前測定のデータ(4月下旬)を採取し、順調に測定を進めている。血圧脈波による動脈スティフネスの測定も順調に進んでいる。平成29年の3月に行ったトレーニング試行の短期間でも、陸上運動群において血圧脈波の測定値(baPWV値)が有意な低下を示した(陸上:1894→1742cm/sec, 水中:1873→1850 cm/sec)。日常生活強度の測定は、機器を準備中であり、近日中に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年5月から3年間のトレーニング期間がスタートし、茨木市老人クラブ連合会からのボランティア数名の支援をいただきながら、各種測定ならびに水中、陸上各群トレーニング回の運営を行っている。本研究の被験者に対して、今後も各種測定データや健康関連有益情報のフィードバックを行い、体力アップの動機付け、トレーニング参加へのモチベーションアップにつなげていきたい。 3年間に渡る長期のトレーニング実験であるため、被験者自身や家族の疾患、ならびに家庭の事情等に影響を受けて、トレーニングを一定期間中断したり、中止するケースが想定される。これらについては、可能な限り、個人の事情に応じた対応を図っていきたいと考えている。また、トレーニングを行う会場等でのケガや、アクシデント等の危険性も考えられる。スポーツ傷害保険への加入に加えて、プールでの監視体制等を充実させて研究を遂行する。 現在、測定が遅れている生活活動強度の測定、心理面への影響をみる指標等を検討していき、測定指標の充実を引き続き検討したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、トレーニング試行およびデータ入力の謝金で計画していた430,000円を使用しなかったこと、ならびに、「その他」で計画していたプール利用料金やスポーツ傷害保険料等の200,000円を使用しなかったためである。トレーニング試行では、インストラクターの日程調整ができず、研究代表者(体育教員)が運動指導を行った。また、データ入力については、入力の枠組みを作成することと同時並行で進める必要があったため、研究代表者が行った。プール利用料金と傷害保険料は、学内の別枠予算で補充できたため、使用をしなかった。これらの理由で、上記の金額の未使用が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、プール利用料が月に約10万円必要となる(@500円, 25名, 月に8回利用)。可能な範囲内で、プール利用料金に次年度使用額を充てたい。また、トレーニングの運動の前後で血圧測定を行っているが、効率的に運動後の影響を速やかに確認したいため、血圧計の台数を約10台増やしたい(1台約6,000円)。
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Research Products
(2 results)