2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K01763
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井福 裕俊 熊本大学, 教育学部, 教授 (70193638)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 立位姿勢 / 重心動揺 / 筋力 / 柔軟性 / 第二次性徴 |
Outline of Annual Research Achievements |
児童生徒の姿勢の乱れは学校現場にとって重要な課題である。本年度は、第二次性徴にある子どもの立位姿勢や重心動揺の実態を明らかにし、それらに影響を及ぼす要因を筋力と柔軟性の観点から調べた。 対象は、小学5年生141名、小学6年生74名、中学1年生63名、中学2年生62名、中学3年生58名の計398名であった。測定項目は、両脚立位および片脚立位重心動揺の総軌跡長、股関節内転筋力・外転筋力、筋力テスト(片脚スクワット、立ち上がりテスト、トランクスタビリティ・プッシュアップ)、柔軟性テスト(ディープスクワット、肩関節柔軟性テスト)、利き脚テストであった。 両脚立位重心動揺は学年の進行に伴い総軌跡長が短くなり、男女間に差は見られなかった。利き脚立位重心動揺も学年の進行に伴い総軌跡長が短縮したが、女子が男子より有意に短かった。股関節内転筋力・外転筋力は学年の進行に伴い大きくなり、内転筋力は中学1年生から、外転筋力は小学5年生から男子が女子より有意に大きくなった。また、筋力テストと柔軟性テストを行い、できる人とできない人の人数分布の経年変化を観察した。その結果、学年の進行に伴い分布に変化を示したテストは、利き脚および非利き脚の片脚スクワット(下肢筋の動的能力)、非利き脚の立ち上がりテスト(下肢筋の静的保持能力)とトランクスタビリティプッシュアップ(体幹筋力)であり、全て筋力を評価するテストであった。 これらのことから、第二次性徴における学年の進行に伴う重心動揺の短縮は、特に中学生では柔軟性よりも筋力の影響が強いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究目的」は、第二次性徴にある子どもの立位姿勢や重心動揺の実態を明らかにし、それらに影響を及ぼす要因を筋力と柔軟性の観点から調べることであった。 熊本地震により、調査協力の承諾を得ていたK市の学校のうち2校で調査できなくなった。しかし、被害の少なかったY市の学校に依頼し、予定していた児童生徒数をほぼ確保することができた。 このような事情のなかで、次のような成果を得た。1)第二次性徴において、学年の進行に伴い両脚立位時および片脚立位時の重心動揺の総軌跡長に短縮がみられること、2)これには柔軟性より、股関節内転・外転筋力、下肢筋力、体幹筋などの筋力の影響を受けていること が示唆された。 これらの成果は、上記の「研究目的」を概ね明らかにできたことになる。したがって、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り、からだの歪み・筋の緊張部位などをもとに、学校現場で手軽に行える「体のバランスをチェックする方法」と「バランスの乱れを解消する方法」の開発・検証を行う。姿勢に関する特別な知識を持たない教師でも手軽に行えるバランスチェック法として5つの方法(閉目歩行、閉目長座歩行、閉目足踏み、肩関節柔軟性テスト、片脚立ちテスト)を考えているが、特にどこでもでき誰でも判定しやすい「閉目足踏み」を中心に考えていきたい。また、バランスの乱れの解消法としては、からだの歪みが筋の緊張(こわばり)と伸長(ゆるみ)によって引き起こされることから、こわばり筋にはストレッチングを、ゆるみ筋には筋力トレーニングを施すことを基本とする。これらの方法を用い、学校教育活動の中で姿勢指導と静的ストレッチングおよび体幹トレーニングを行ってもらう。現在のところ、研究計画の変更は考えていない。
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Causes of Carryover |
主要物品の一つとして「姿勢測定プランニングシステム ボディコンシェルジュ」を購入する予定であったが、交付申請後に高額ではあるがはるかに高性能の「進化型ボディアプリケーション peak a body」が発売されたため、そちらに変更し購入した。そのため、経費オーバーでもう一つの主要物品である「重心動揺グラビコーダ」を購入することができなくなった。その分支出が抑えられたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入できなかった「重心動揺グラビコーダ」に代わる安価で同性能の機器が見つかったことから、まずはそれを購入したい。その他は、計画通り使用する予定である。
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