2016 Fiscal Year Research-status Report
老化によるサルコぺニアの機序の解明-慢性腎臓病モデルを利用して-
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16K01828
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
園生 智広 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (70614866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重松 隆 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (30187348)
大矢 昌樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90550301)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / サルコペニア / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、老化制御臓器と考えられている腎臓の機能低下がサルコペニアに及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。初年度では、5/6腎摘出ラットを4週もしくは8週間、高リン低カルシウム食で飼育することで慢性腎臓病モデルを作成し、腎機能の低下に伴う骨格筋の組織重量変化および筋分化調節因子(myogenin、MyoD、Myf5)の遺伝子発現量の変化を定量的RT-PCRにて確認した。 自由給餌の結果、慢性腎臓病モデルラット群で体重・総食餌量は40%有意な低値を示したが、一日平均での体重当たりの食餌量は20%低値となった。血清分析の結果、4週間および8週間の飼育期間後の慢性腎臓病ラット群で顕著な腎機能の低下を示した。 下腿・体幹の骨格筋重量は、8週間の慢性腎臓病ラット群では低値を示したが、体重当たりで補正した相対重量では有意に高値となり、本実験モデルにおいて、骨格筋重量をサルコペニアの判断基準にすることは不適当である可能性が示唆された。一方、4週間の慢性腎臓病ラット群では、血中指標が有意な腎機能低下を示していたが下腿・体幹の骨格筋重量の変化は認められなかったため、尿毒因子が骨格筋に及ぼす影響を評価するには、本モデルを採用した場合、4週間の方が有用であるかもしれない。 予備実験において、腎機能の低下に伴い顕著な低下を認めた筋分化調節因子の遺伝子発現量は、8週間の実験期間群での遅筋優位のヒラメ筋と速筋優位の前脛骨筋の測定を終了しており、慢性腎臓病モデルラット群において顕著に低値を示したのは、速筋優位の前脛骨筋でのMyf5のみであった。その他の骨格筋は随時測定する予定である。 また、これまでの分析結果により、サルコペニアの評価として重量では不適当な可能性が示唆されたため、骨格筋の凍結切片を用いた組織染色法およびwestern-blot法を用いて筋組成等を評価検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備実験時よりも、5/6腎摘出ラットの死亡率が上回り、予定検体数を維持するために追加が必要であったことに加え、筋分化調節因子遺伝子発現量が、予備実験とやや異なる結果となり追試をする必要があったため、初年度の研究計画として若干遅れている。しかしながら、次年度の研究計画である細胞培養による実験のための、培養細胞株の購入やプロトコルの検討を先行して実施しているため全体としては概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究費申請時には、あまり研究報告が見られなかった慢性腎臓病とサルコペニアの関連だが、この一年間でいくつかの研究報告がなされてきており、注目されている研究分野となっている。それらの研究報告との差別化としては、本研究で分析する骨格筋の種類が豊富なことを強調したい。老化による筋力の低下は、一般的には速筋線維が萎縮することが知られている。腎機能の低下に伴った筋萎縮も、速筋線維に特異的な反応であるのかを検討したい。また、もしそうであるならば、腎機能の低下によるミネラル恒常性の破綻が原因なのか、ミネラル以外の尿毒物質が原因なのか、そしてそれらが筋線維の組成の異なる骨格筋のどのような違い(受容体等の分布)に起因するのかを明らかにしたいと考えている。
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