2016 Fiscal Year Research-status Report
多血小板血漿による組織修復促進機序の解明と至適調整法の確立
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16K01832
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
斎田 良知 順天堂大学, 医学部, 助教 (00534885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多血小板血漿 / 組織再生 / 組織修復 / 成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
多血小板血漿(Platelet-rich plasma, PRP)は、末梢血を遠心分離して調整される血小板を多く含む血漿分画であり、その中には血小板由来の成長因子が豊富に含まれる。成長因子は細胞の増殖・分化や細胞外基質の産生を促進するため、PRP療法は運動器疾患に対する新規保存加療の一つとして注目されている。しかし、PRPの調整法は多岐に渡り、調整法によっては血小板以外にも好中球や赤血球を多く含むPRPも存在する。我々は、PRP療法の効果は、こうしたPRPの調整法により異なると考え研究を行っている。 ヒト末梢血から、血小板の濃度は同等であるが白血球の濃度が①高い②低い③ほとんどない、の3種類のPRPを調整し、その中に含まれる成長因子の濃度を定量した。すると、PDGFやVEGFの濃度は血小板濃度と白血球濃度の両者と相関したが、TGFβやbFGFは血小板とは相関するが白血球とは負の相関を示す傾向にあった。また、組織の異化を促進させるMMP-9は白血球濃度とのみ相関を示した。そのため、白血球を多く含むPRPでは、PDGFやVEGFは多く含むが同時に高濃度のMMP-9を含み、組織の異化と同化の両方の作用を有するPRPと位置付けられた。また、少数の白血球を含むPRPは、TGFβやbFGFの濃度は高いがMMP-9はほとんど含まず、同化作用を中心に期待できるPRPと考えられた。また、白血球をほとんど含まないPRPは、異化作用を有さないが、同化作用も他のPRPと比較して弱いという結果であった。この結果をJournal of orthopaedic science 21(5) 683-639 2017 に報告した。 現在は遺伝子改変動物(マウス)を用いて、PRPによる組織修復のメカニズムの解明と、PRPの調整法によって組織修復に差があるかどうかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に、ヒト由来末梢血を使用した研究成果の英語論文の執筆を行い掲載された。 マウスを用いた動物実験でも、計画通りにデータが得られており、現在論文の執筆中である。 更に、遺伝子改変マウスを用いて、PRPによる組織修復のメカニズムを検討する実験を現在進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで通りに、研究計画に沿って動物実験を進めていく。 また、運動器疾患の患者さんに対してPRP療法を行い、その効果に影響を及ぼす因子の検討も開始しており、これらの臨床データも解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者が短期海外留学し、海外での情報収集を行っていた時期があったため、主に動物を用いた基礎実験に使用する予定であった予算を使用せずに年度末を迎えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒト由来末梢血からのPRPの調整に使用する種々の精製キットの購入(単価約20,000~50,000円)や、遺伝子改変マウスの飼育及び実験に使用する種々の試薬や抗体、細胞培養に使用する物品の購入に充てる予定。また、研究成果の海外学会での報告も予定しており、旅費にも充てる予定。
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Research Products
(6 results)