2017 Fiscal Year Research-status Report
体質と環境のミスマッチが生じる糖尿病発症の機構解明による先制医療の実現
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16K01834
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
高 ひかり 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60338374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加賀 直子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80338342)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 2型糖尿病 / キャピラリー電気泳動質量分析 / DOHaD仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、通常食自由摂餌母ラットと低糖質カロリー制限母ラットに出産当日から一週間高メチルドナー食あるいは摂餌量を合わせた通常食を与え各群の1週齢仔、18週齢仔の血清中の極性低分子代謝物を分析し、母乳を介した高メチルドナー食の影響を解析した。その結果、1週齢仔では妊娠期通常食及び低糖質カロリー制限ラット群間で有意差のあった代謝物26種中15種、18週齢仔では20種中7種の代謝物が母乳を介した高メチルドナー食により優位差がなくなった。また、1週齢仔においては母乳を介した高メチルドナー食により通常食母ラット、低糖質カロリー制限母ラットから生まれた仔共通にMethionine Metabolism関連代謝物(Dimethylglycine、Sarcosine、Betaine)の優位な増加が観察されたが、18週齢仔になるとこの影響はなくなっていた。この事より、これらの代謝物は明らかにメチルドナー食が母乳を介して仔に与えられた影響であると考えられる。母乳を介したメチルドナー補充により有意差のなくなった代謝物を生物学的に解釈するために、Metabolite Set Enrichment Analysis(MSEA)ツールを用いて解析した。その結果、有意差のなくなった代謝物Uric acid、2-hydroxybutyric acid、3-hydroxybutyric acid、Leucine、Isoleucine、Gluconic acid、Succinic acidは、耐糖能異常やインスリン抵抗性、心疾患に関与するとされる物質であった。これらの血中代謝物レベルの改善が実際の症状の緩和につながるのか更なる検証が必要ではあるが、低出生体重ラット仔へ出生後授乳期に母乳を介したメチルドナー補充が耐糖能異常やインスリン抵抗性の緩和に繋がることを示唆した結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DNAメチル化低下のようなエピジェネティックな変化は環境要因によって誘導されるため生後、メチルドナー食の補充などで一部改善されることが報告されている。そこで今年度は、低出生体重ラット仔への出生後授乳期に母乳を介したメチルドナー補充を行い、生じた血中極性代謝物の変動を解析した。1週齢仔においては低栄養母から生まれた仔で有意に差異のあった26種の代謝物はメチルドナー食の補充により15種の代謝物の有意差がなくなった。しかし、今年度予定していた母乳を介しメチルドナー補充した仔らに高脂肪食負荷時血中極性代謝物の変動追跡調査が終了していないためやや遅れ気味であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は出生後授乳期に母乳を介したメチルドナー補充による低出生体重ラット仔の1週齢仔、18週齢仔の血中極性代謝物の変動を解析した。次年度はメチルドナー補充ある、なしの低出生体重ラット仔における高脂肪食負荷による18週齢仔の血中極性代謝物の変動を解析する。1週齢仔においてメチルドナー補充により有意差がなくなった代謝物が、その後の高脂肪食を摂餌することによりどのように変動するのか解析する。今年度メチルドナー補充により回復が見られた代謝物を含め優位に変動する代謝物の有無を解析する。これらの代謝物の変動を解析することによりメチルドナー補充が生活習慣病(成人病)予防につながる可能性があるのか、メタボリック症候群に起因する2型糖尿病のリスクファクター化合物になるかどうか検討する。リスクファクター化合物が同定されれば2型糖尿病発症前に予測することができ、先制医療に役立つ事になる。また耐糖能異常やインスリン抵抗性などの病態では脂質代謝の変動を示唆する代謝物が報告されている。そこで将来的に脂質代謝物についても解析を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった。研究計画に変更はなく前年度の研究費も含め、予定通りの計画を進めていく予定である。本研究を申請するに当たり計上した研究費については、前処理や分析に使用する消耗品を主体とした経費が大部分を占めている。消耗品等の節約を心がけ、見積書を見比べ出来るだけコストダウンを心がけた。そのため次年度使用額が生じた。 (使用計画)1.質量分析にかけるためのサンプル前処理消耗品代(フィルター、有機溶媒、標準物質等)2.質量分析にかかる消耗品代(カラム、アニオン・カチオンバッファー、シース液、キャピラリー、コネクター、ネブライザー等)3.一般的な消耗品(チップ、ガラス器具等)4.国内学会参加のための旅費、参加費を予定している。
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[Journal Article] Serum caffeine and metabolites are reliable biomarkers of early Parkinson disease.2018
Author(s)
Fujimaki M, Saiki S, Li Y, Kaga N, Taka H, Hatano T, Ishikawa KI, Oji Y, Mori A, Okuzumi A, Koinuma T, Ueno SI, Imamichi Y, Ueno T, Miura Y, Funayama M, Hattori N.
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Journal Title
Neurology.
Volume: 90
Pages: e404-e411
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Characteristics of hepatic insulin-sensitive nonalcoholic fatty liver disease.2017
Author(s)
Shigiyama F, Kumashiro N, Furukawa Y, Funayama T, Takeno K, Wakui N, Ikehara T, Nagai H, Taka H, Fujimura T, Uchino H, Tamura Y, Watada H, Nemoto T, Shiraga N, Sumino Y, Hirose T.
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Journal Title
Hepatol Commun.
Volume: 1
Pages: 634-647
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Targeting mantle cell lymphoma metabolism and survival through simultaneous blockade of mTOR and nuclear transporter exportin-1.2017
Author(s)
Sekihara K, Saitoh K, Han L, Ciurea S, Yamamoto S, Kikkawa M, Kazuno S, Taka H, Kaga N, Arai H, Miida T, Andreeff M, Konopleva M, Tabe Y.
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Journal Title
Oncotarget.
Volume: 8
Pages: 34552-34564
DOI
Peer Reviewed / Open Access