2017 Fiscal Year Research-status Report
組織酸素分圧上昇が筋サテライト細胞の増殖・分化と筋損傷治癒に及ぼす効果
Project/Area Number |
16K01837
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
川田 茂雄 帝京大学, 医療技術学部, 講師 (20376601)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 骨格筋 / 筋サテライト細胞 / 再生 / 高酸素 / 酸素分圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の酸素分圧が変化することにより細胞の動態に変化が生じることが知られている。先行研究では、骨折や筋挫滅といった組織損傷は低酸素分圧環境の高地では治癒が遅れるが、高酸素環境下では治癒が促進されることが報告されている。しかし、たとえば骨格筋損傷治癒に必須の筋幹細胞である筋サテライト細胞の増殖と分化が、高酸素環境のみによって直接に引き起こされるのか、あるいは高酸素環境が炎症作用を増強し、免疫細胞等の他の細胞の活性化を経由して間接的に引き起こされるのかは不明である。そこで、今年度は、マウス筋サテライト細胞であるC2C12細胞株を用いて、高酸素環境が細胞のDNA合成を促進するかどうかを検討した。 C2C12細胞を高酸素環境(80%O2、5%CO2)に暴露し、細胞のDNA合成能を検討したところ、高酸素環境はDNA合成に影響を与えなかった。また、細胞数にも影響を与えなかったことから、高酸素環境が直接筋サテライト細胞の増殖能に影響を及ぼすことはないと考えられる。 しかしながら、筋サテライト細胞は増殖し、その後融合することにより筋管細胞となり、やがて成熟し筋細胞となることから、高酸素環境の筋損傷治癒効果を考えた場合、分化への影響も検討する必要がある。また、高酸素環境が筋損傷治癒に与える効果を検討するためには、免疫細胞による炎症反応を介した間接的作用も考慮する必要がある。実際にin vivoの研究では、筋損傷治癒過程で損傷部位にて免疫細胞が様々な成長因子を分泌していることが報告されている。今後は、これらの間接的要素も考慮して検討する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高酸素環境の細胞増殖能への効果を詳細に検討するには、酸素暴露時間の要素だけを変化させるのでは充分とはいえず、酸素濃度も可変にする必要がある。今年度は、細胞培養時の酸素環境を自由に変更できるように機材を含めた実験系の再構築を行ったため、その改変に時間を要し、当初の予定より進捗が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、筋細胞の筋管細胞への分化に及ぼす高酸素環境の影響を検討する。また、高酸素環境が間接的に筋細胞増殖能や分化能へ影響を与える可能性を考慮し、いくつかの成長因子を培地に追加し検討する。 動物実験においては、高酸素環境が筋損傷治癒を促進することが報告されているが、それは高酸素を暴露していない場合との比較であることから、高酸素が治癒を促進したのか、筋損傷による局部の低酸素環境が細胞増殖能を低下させているだけなのかは区別ができない。そのため、in vitroの実験系において、培養条件を低酸素から高酸素まで幅広く変化させ、細胞の増殖・分化能を検討する。
|
Causes of Carryover |
実験系再構築のための機器が予定より安価に入手できたため繰越金が生じた。今年度の研究費は、細胞培養のための消耗品、抗体と成長因子の購入代、論文掲載費に充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)