2017 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア呼吸鎖超複合体中のコエンザイムQ10量は加齢により低下するのか?
Project/Area Number |
16K01842
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
加柴 美里 東京工科大学, 教養学環, 准教授 (80338186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 順寛 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (60134475) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 呼吸鎖超複合体 / コエンザイムQ10 / 加齢 / ブルーネイティブ電気泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢に伴いミトコンドリア呼吸機能は低下するが,その原因は解明されていない.ミトコンドリア電子伝達系は呼吸鎖超複合体を形成しており,コエンザイムQ10(CoQ10)もこの中に含まれて存在しているらしい. CoQ10の細胞全体中の濃度は加齢に伴い減少するが,呼吸鎖超複合体中のCoQ10量が加齢により変動するかは不明である.本研究は,呼吸鎖超複合体に結合して存在しているCoQ10量の定量手法を確立し,呼吸鎖超複合体中のCoQ10量の加齢による変動を解析する.さらに,呼吸鎖超複合体へのCoQ10輸送機構の解明を試みる 2年目の本年度は初年度に確立したミトコンドリア呼吸鎖超複合体に含まれるCoQ量の解析手法を応用し,①培養細胞,②マウス脳,③マウス肝臓のミトコンドリア中のCoQ量の解析を行った.①培養細胞としてヒト肝がん由来HepG2細胞ミトコンドリアを解析した.超複合体が泳動された付近と,さらに低分子側の2か所に顕著なCoQのピークを認めた.②マウス脳の解析でも①同様,2か所にCoQのピークをみとめた.しかしながら,③マウス肝臓のミトコンドリアの解析では,CoQが高分子側から低分子側にまでブロードに検出され,超複合体中のCoQのみを検出することが難しいことが分かった. 解析が順調に進展した培養細胞を用いて更なる検討を行ったところ,CoQ10合成阻害剤の添加により,超複合体中のCoQ10量がまず低下し,その後,ミトコンドリアの他のフラクションのCoQ10が低下することがわかってきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミトコンドリア呼吸鎖複合体中のCoQ量の検出手法の確立は順調に行われた.本手法を応用して培養細胞のミトコンドリアを解析したところ,順調に解析できた.マウス脳のミトコンドリア解析も順調であった.しかしながら,マウス肝臓のミトコンドリア解析においては,電気泳動後のCoQの検出がブロードになり,マウス肝臓を用いた実験においては超複合体中のCoQ量の定量にはいたっていない.次年度は,本問題を解決するために,電気泳動手法に加えて免疫沈降手法にて超複合体を分離し,超複合体中のCoQ10量の定量を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
ブルーネイティブ電気泳動のみでなく,免疫沈降手法も駆使して,マウス肝臓の呼吸鎖超複合体を分離し,複合体中のコエンザイムQ10量の解析を引き続き行う.免疫沈降手法での実験手法確立に成功したら,引き続き下記検討を行う. ①加齢における変動の解析:加齢モデル動物のミトコンドリア呼吸鎖超複合体中のCoQ量の解析を行う.加齢モデル動物としては,老齢正常マウス(1年齢,1.5年齢,2年齢)や早老症モデルマウスを使用する.早老症モデルマウスとしてはKlothoマウス(Clea Japanより購入予定)やSAMマウス(SAM研究協議会に譲渡依頼予定)の使用を予定している. ②様々な病態モデル動物のCoQ量解析:本研究の応用として,CoQ投与効果が期待されている疾患モデル動物のCoQ量を解析する. ③サプリメントとして投与したCoQのミトコンドリア呼吸鎖超複合体への取り込みの検討:実験動物にCoQ10をサプリメントとして餌中に投与し,投与したCoQ10がミトコンドリア呼吸鎖超複合体に取り込まれるかを検討する.実験動物として使用予定のマウスは,イソプレノイド側鎖長が9のCoQ9を主に生合成している.一方,ヒトはイソプレノイド側鎖長が10のCoQ10を主に産生している.CoQ9を産生しているマウスにCoQ10含有餌を投与し,ミトコンドリア呼吸鎖超複合体内のCoQ10量を測定することにより,餌から呼吸鎖へのCoQ取り込み量を測定する. ④呼吸鎖超複合体へのCoQ取り込み機構の解明,特にCoQ10結合タンパク質プロサポシンの役割解明:コエンザイムQ10結合蛋白質プロサポシンに注目している.ミトコンドリアを分離精製したところ,プロサポシン高発現株ではミトコンドリアCoQ10量が上昇し,ノックダウン株では低下していた.
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Causes of Carryover |
ブルーネイティブ電気泳動手法では,マウス肝臓の解析が困難であることがわかり,マウス肝臓の解析が次年度以降に持ち越されたため.次年度,免疫沈降手法の解析費用として用いる.
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