2017 Fiscal Year Research-status Report
スタチン誘発性ミオパチーの初期症状は高齢期の生活機能低下に影響するか
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16K01853
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
河合 恒 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50339727)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スタチン / ミオパチー / 運動機能 / 地域高齢者 / 介護予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高脂血症治療薬であるスタチンの服用が、地域高齢者の身体の痛み、運動機能低下などのミオパチーの初期症状に影響しているか調査することを目的としている。このような症状はStatin-associated muscle symptoms(SAMS)とも呼ばれ、最近欧州アテローム性動脈硬化症学会がコンセンサスを発表するなど国際的にも注目されている。研究計画2年目の平成29年度は、地域高齢者におけるスタチン服用とSAMSとの関連に関する横断的分析を行い、研究成果を国際学会および学術誌に発表した。また、スタチン服用のSAMSへの影響に関する追跡調査を行った。 横断的分析の対象者の地域高齢者940名のうち、スタチン服用者は247名(26.3%)で、スタチン服用者では非服用者と比べて年齢が高く、身長が小さく、服薬数が多く、疾患の有病率が高い、すなわち、SAMSのリスクが高いことがわかった。運動機能との関連は、スタチン服用者では握力が弱く、通常歩行速度が遅かったが、SAMSのリスクの影響を調整すると、これらの運動機能低下にはスタチン服用自体が関連しているわけではなく、SAMSのリスクのほうが関連していることが明らかとなった。今後、縦断的分析や、スタチン種別の分析などが必要であるものの、本研究の結果は、地域において継続的にスタチンを服用している高齢者では、スタチン服用自体というよりはむしろSAMSのリスクによって運動機能が低下しており、スタチン服用自体は安全だが、スタチン療法においてはSAMSのリスクの管理が重要であることを示唆するものである。 追跡調査については、板橋区フィールドにおいて会場調査を実施し、地域高齢者のスタチン服用状況を調査するとともに、握力、歩行速度、骨格筋量、膝・腰の痛み、倦怠感などのデータを収集した。調査参加者数は、761名(男性319名、女性442名)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、板橋フィールドにおけるデータ収集と、横断分析結果の論文発表を計画していたが、計画通り国際誌に原著論文を発表し、データ収集も予定通り実施することができている。今後、コホート間のデータ統合し、スタチン種別による分析や、経年的データの統合による縦断的分析が課題であるが、データ入力はおおむね完了しており、分析に活用するためにデータセットへの統合を行っていく段階である。これらの状況から研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
横断的分析による研究の限界は、因果関係は不明という点である。今後、縦断的分析によって、スタチン服用が運動機能にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしていく必要がある。また、スタチンは種別によってSAMSの発症率が異なることが報告されており、スタチン種別の分析も必要である。これらについては、これまでに収集したデータをもとに、それぞれ縦断データ、2コホート統合データを作成し分析を進めていく予定である。 また、スタチンによるコレステロール低下作用が、認知機能や精神機能へ及ぼす影響についても近年注目が高まっている。われわれのデータによる予備的な分析では、スタチン服用が抑うつの改善に影響するかもしれないという結果も得ている。認知機能や精神機能も生活機能に関わる重要な機能であるので、これらへの影響も並行して分析していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度において収集したお薬手帳データの入力、データセットへの統合作業が一部完了していないため、研究補助のアルバイトのための人件費に残額が生じた。残額については、次年度にデータセット作成補助のアルバイトの雇用に使用する。
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Research Products
(5 results)