2018 Fiscal Year Research-status Report
受傷後急性期の打撲傷を証拠化する試み~虐待の早期発見を目指す取り組み~
Project/Area Number |
16K01857
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
美作 宗太郎 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (50284998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 真紀 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (30292379)
大島 徹 秋田大学, 医学系研究科, 講師 (70464427)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子ども虐待 / 打撲傷 / 赤外線サーモグラフィーカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画通り,日常生活で転倒するなどして受傷した急性期の打撲傷などについて,経時的に赤外線サーモグラフィーカメラで撮影するデータの蓄積を行った. 今年度は新たに球技中に捻挫したケースなど,いわゆる直接的な打撲による受傷でない場合でも赤外線サーモグラフィーカメラにより皮膚温に変化が生じることが明らかになった.通常,軽度の打撲傷では皮膚温の変化は殆どないが,表皮に僅かな表皮剥脱(擦過傷)を伴う場合は皮膚温の上昇として観察でき,これは表皮のバリアが崩壊することにより局所的な炎症が生じるためと考えられた.しかし,中等度以上の打撲傷では,表皮剥脱(擦過傷)を伴わなくても皮膚温の上昇として観察でき,捻挫のような高度な軟部組織損傷を伴う場合は周囲の健常皮膚との温度差が4~5度にも及ぶことが判明した.この原因として,表皮のバリアが崩壊せずとも軟部組織損傷のみでも高度な炎症が生じているものと考えられ,この炎症は疼痛として1週間,熱感・腫脹として10日間に亘り継続した.なお,この捻挫のケースでは,受傷直後から疼痛の訴えはあるものの,受傷からしばらくは外表面には皮膚変色などを伴わず,赤外線サーモグラフィーカメラによる画像が唯一の重症度を示す物的証拠であった. 本研究を子ども虐待の損傷検査などに実務応用するにあたり,オーバーダイアグノーシス(過剰な診断)が問題になる.既に判明している予防接種などの注射や虫刺傷などでも皮膚温は上昇することが知られており,打撲傷以外のケースについてもデータの蓄積を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の難点は,不慮の事故によって打撲傷が生じるのを待たなければならない問題がある.当初からこの問題は予想されたため,研究期間を長めに設定して,ケースの集積を続けている.もっとも,実績の概要でも紹介したように,本研究ではオーバーダイアグノーシス(過剰な診断)を防ぐために,打撲傷以外に皮膚温が上昇する様々な条件についてもデータを取っており,成果を上げている. なお,本年度は予期していない出来事として,赤外線サーモグラフィーカメラの故障があった.撮影の途中で赤外線サーモグラフィーカメラがフリーズしてしまい,せっかくの打撲傷のデータが保存できないという事態に陥り,また業者に修理に出している間は研究を休止せざるを得なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
データを解析するにあたり,ややデータが不足しているため,暫くは新規データの蓄積を継続する.打撲傷はもちろんのこと,その他の皮膚温の上昇を伴うケースも積極的に赤外線サーモグラフィーカメラによる測定を行う.同時に,今まで蓄積したデータについては赤外線サーモグラフィーカメラ専用のソフト(FLIR Tools)を用いて数的情報として解析する. 研究成果については既に国内・海外でも発表しており,子ども虐待を証拠化する実務に応用する目標を達成する.
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Causes of Carryover |
国際学会発表のための英文校正や英語ナレーションは予想より安価に抑えられたが,赤外線サーモグラフィ―カメラの故障により修理代を支出しなければならないなど予想外の出費もあり,結果的に若干の残余金が生じた.翌年度は最終年度のため,データの解析や情報発信の費用として使用したいと考えている.
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Research Products
(3 results)