2017 Fiscal Year Research-status Report
社会的相互作用によるオキシトシンの分泌が、児童の認知機能に与える影響
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16K01861
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
齋藤 大輔 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (30390701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 浩隆 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (70401966)
藤澤 隆史 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命講師 (90434894)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳機能イメージング / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳機能を非侵襲に測定することの出来るツールである磁気共鳴画像法(MRI)を用い、健常児童の発達に伴う脳機能の変化を、年齢や発達段階ごとに調査し、生活環境・習慣との関連を調査した。そして、学童期児童から成人までの注意・集中能力に関する発達と、その能力を向上させる作業を脳科学の見地から明らかにし、得られた成果を実際の教育現場へ成果を還元することを目的としている。 まず、注意・集中に関する脳機能及び脳構造を調べるMRI実験を行うための、実験を企画し、これまで行ってきた注意能力を調べるためのANT課題(Attentional Network Test)と、反応抑制課題(Go-Nogo Test)を合わせて行う。また脳の構造的変化や神経走行の変化を評価できる撮影を行い、それらを解析することで、どのような認知能力が脳のどの構造の変化と対応するかを明らかにする。 前年度に引き続き、MRIを用いた研究のセットアップを行い、脳機能評価・脳構造評価を行うための調査を行っている。被験者として、成人77名と児童80名にMRI計測を行い、脳の構造と行動の関係を評価した。その結果、年齢と共に脳の容積が変化する場所として、眼窩前頭皮質・内側前頭前皮質などの前頭葉を中心とした領域が見られたが、さらに解析を行っているところである。 そのほかにも、日常の親子関係や性格傾向、生活態度などを評価する質問紙データも取得し、それらの項目と脳構造との関係を解析・評価を続ける。また、発達と共に変化する白質神経走行も成人・児童共に計測し、年齢とともにどの領域がどのように変化するか、また環境の要因がどのように影響しているかを明らかにする。上記に加え、児童の反応抑制能力を評価するための課題を設定・実施し、脳機能と構造の関係を調べると共に、唾液中のオキシトシン濃度が反応抑制能力にどのように関与しているかについての調査を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおりに、子どもの脳構造をMRIにより撮影を行っており、また、各種質問紙のデータも取ることにより、脳と行動との関係について調査が進んでいる。また、オキシトシンの採取においても、順調に進んでおり、今後の解析を待っているところである。 これまでの予備調査により、実験課題(反応抑制)の選定も進み、進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに取得されている、脳構造・脳機能データと、子どもの日常についての質問紙、反応抑制能力を評価する実験課題、唾液中オキシトシンの濃度を関連づけて解析すると共に、データ取得を続ける。そして、それらの項目の影響・相関などをまとめるとともに、論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、1) オキシトシンの測定手順、2) 天候不順による被験者児童の参加者減少、3) 国際学会への不参加、4) 解析用コンピュータの導入の遅れ、等が上げられる。 唾液中オキシトシンの濃度計測は、唾液中に含まれるオキシトシンを特異的に認識する抗体を用いた直接競合ELISA法になる。その際に、プレートに固定化されているオキシトシンを用いるが、その量は製造ロット毎に若干異なるために、測定対象者の唾液サンプルが、ベースライン条件を含めて全ての条件が採取できないと、解析に移ることが出来ない。そのために、最終年度に一気に解析を行うため、次年度使用額として繰り越した物になる。 次年度使用額の使用計画は、数多くのオキシトシン計測を行うと共に、各種学会へ積極的に参加し、情報収集に努める。また、高額にはなるが、脳機能や脳構造の解析用コンピュータを導入し、多くの情報量を扱う脳画像解析を進める。これらを行うことにより、予算の早期執行と確実な研究の遂行を図る。
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