2018 Fiscal Year Research-status Report
子ども・子育て支援新制度が保育現場にもたらす影響についての研究
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16K01865
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大倉 得史 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (70389401)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子ども・子育て支援新制度 / 保育の質 / 子どもへの影響 / 事業者の交替 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、子ども・子育て支援新制度によって保育サービスの自由化・多様化が促されたことによって、子どもや保護者の生活、あるいは現場の保育にどのような影響が出ているかを調査することである。研究計画はA)全国各地の保育施設に対する大規模アンケート調査、B)新制度の影響を強く受けたと思われる保育施設の保育者、保護者への聞き取り調査、C)子どもの姿の変化を知るための実地観察という3本の柱から成っている。 平成30年度は、Aのアンケート調査について、全国の保育施設の中から層化多段抽出法により600の保育施設を無作為抽出し、アンケート用紙を発送した。このうち276施設から回答が集まり、これについて記述統計的な分析を行ったところ、新制度のもと入所児童の獲得競争が激しくなり、幼稚園の運営が厳しくなっていることや、認定こども園では事務作業量が大きな負担になっていることなど、いくつかの傾向が明らかになった。この第一次調査結果については、回答に協力してくれた全施設に概要を発送した。 一方、Bの調査については、事業者が変わったことによって保育士の総入れ替えや保育内容の大きな変化が生じ、入所児童に心身の不調などの深刻な影響が出たケースについて、投稿していた学術誌論文が公刊された。また、その他のケースについても調査を進め、事業者の交替が子どもに悪影響を及ぼさないような制度のあり方について、検討を深めた。 さらに、Cの一環として、認定子ども園に移行したばかりの民間保育園を訪れ、現在の保育の状況、子どもの姿などを実地に観察や聞き取りを行った。その中で、保育士の確保が困難になっている状況が浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の3本の柱のうち、Aの計画については、平成30年度中にアンケートの分析をすべて完了する予定であったが、回答の集計作業、第一次の記述統計的な分析、協力のあった施設への結果概要の発送等に思いのほか時間を要したため、まだ第二次分析に着手した段階である。 Bについてはおおむね予定通りで、子ども・子育て支援新制度による影響を明らかにするという研究目的に沿ったデータが得られている。 Cについては、A、Bの作業に時間を要したため、十分な量の調査を行うことができなかった。平成31年度に本格的に取組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の3本の柱のうち、Aについては記述統計的な第一次分析を踏まえ、推測統計も含めたより詳細な分析作業に入る。データ入力および分析作業については学生アルバイトの助力を得ながら着実に進めていく予定である。 また、Cについては、Bの聞き取り調査に協力してくれた保育施設を中心に実地見学を行い、保育施設のタイプごとに子どもの姿がどう変わってくるのかを観察していく。 一方、最も順調に進んでいるBの調査についても、上記の協力施設への聞き取りなどをさらに重ね、より充実したものにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度に分析までを完了させる予定だった大規模アンケート調査について、回答の集計作業や分析作業に手間取り、第一次の記述統計的な分析をするに留まっており、それとの関連で、協力のあった施設を中心として実施する予定であった実地見学・聞き取り等をほとんど行うことができなかった。 そのため、上記の実地見学・聞き取り調査等のための旅費および謝金として、50万円程度を使用することを見込んでいる。また、アンケートの第二次分析に当たって、学生アルバイトの雇用等に10万円ほどの使用を見込んでいる。その他の残金は、物品費や文字起こし等に使用する予定である。
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Remarks |
京都大学学術情報リポジトリに掲載された論文
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