2017 Fiscal Year Research-status Report
実行機能育成プログラムが被災地宮城県の子どもの実行機能と学力へ及ぼす効果
Project/Area Number |
16K01866
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
松村 京子 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (40173877)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 実行機能 / セルフレギュレーション / 集中力 / 幼稚園児 / 小学1年生 / STARTプログラム / 宮城県 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災により宮城県は甚大な被害を受け,子どもに関して,不登校の増加,学業面,興奮や混乱等の情動面,落ち着きのなさ等の行動面の問題が報告されている(宮城県教育委員会, 2013)。これらは,子どものセルフレギュレーション能力や実行機能の問題と捉えることができる。そこで,このような宮城県の子どもの問題の解決と予防を目指して,申請者が開発した実行機能育成のためのSocial Thinking & Academic Readiness Training(START)プログラムを就学前児及び小学校低学年児に実施し,実行機能等への効果を検証する。さらに小学校入学後の学習成績及び学習行動との関連性も明らかにすることを目的とする。 平成28年度は,幼稚園児にSTARTプログラムを実施し,その結果,抑制課題において,実施群は統制群より有意に抑制コントロール能力が向上した。教室での行動は,教師による絵本の読み聞かせ場面において,実施群は統制群に比べて,有意に集中している時間が増えた. 教師による子どもの評価においては,実施群は統制群に比べて不安/抑うつ問題行動が改善した。 平成29年度は、小学1年生の1学期にSTARTプログラムを行い,その効果を検証した。実施群は55名の子どもたちで,STARTプログラムを8週間,担任教師から小学校の授業の一環として受けた。統制群は46名でその期間,一般的な指導を受けた。STARTプログラムの評価は,行動性セルフレギュレーション課題,実行機能課題,ビデオによる行動分析で行われた。その結果,実施群は統制群と比べて,行動性セルフレギュレーション課題得点が大幅に伸びた。また,視覚ワーキングメモリ課題得点の向上傾向がみられた。ビデオ行動分析では,教師の指示に対する応答性が,実施群は統制群よりも有意に早くなったことが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
宮城県の幼稚園児と小学1年生児童に対してSTARTプログラムを実施する実施群と,時期をずらせて実施する統制群を設定して,その効果を検討した。評価については,実行機能課題,行動性セルフレギュレーション課題,教師による評価,教室での行動のビデオ分析により総合的に行った。その結果,実施群は統制群と比べて,幼稚園児では抑制能力,集中力が向上し,不安・抑うつの問題行動が改善され,小学1年生では行動性セルフレギュレーション能力が向上し,視覚ワーキングメモリの向上傾向,教師の指示に対する応答性が改善された。これらの研究成果の一部をまとめた,日本の幼稚園児の実行機能,行動性セルフレギュレーション能力の男女差に関する論文が欧文誌に掲載されたことは当初の計画以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
H30年度には,今までの介入研究の成果をまとめ,国際学会で発表するとともに,論文を作成し,学会誌へ投稿する。 また,小学2年生にSTARTプログラムを実施し,その効果を検証する。さらに,実行機能,セルフレギュレーション能力が授業中の学習行動,学業成績の関係性を明らかにする。
|
Research Products
(10 results)