2017 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児期の象徴化を生みだす分離と言葉に関する臨床心理学的研究
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16K01867
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
黒川 嘉子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (40346094)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2021-03-31
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Keywords | 乳幼児のことば / 移行対象 / 象徴化 / 乳幼児心理臨床 / プレイセラピー / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、完全な象徴機能をもつ前の乳幼児特有の言葉について、分離のプロセスと言葉、身体感覚をともなう言葉、遊ぶことと話すこと、の3つの研究項目から検討し、他者と共有できる言葉と魔術的な主観的言葉との質的吟味をおこなうことを目的としている。 29年度は、乳幼児期特有の言葉の基礎的データの収集として、協力が得られた幼稚園において、子育て支援事業に参加している1~2歳児および在園している3歳児および4歳児とその保護者を対象に質問紙調査を実施した。その結果からは、破裂音を発する唇の感触や音のリズム、強弱など子どもの身体感覚と結びついており、前言語的で無様式な総括的体験(Stern,1985/1989)という全体性をそのまま抱えるために、その子どもが発見し、創り出した言葉であることが示唆された。また、保護者も、何を意味しているかわからないが、子どもにとって大切な言葉として、子どもの微妙な感情状態を表していることに関心を向けていることも示された。1歳後半から2歳代という再接近期に顕著に使われ、3歳になるといつの間にか必要としなくなっていることも明らかになり、言語発達途上で発音がただ難しいというだけでなく、音感性の移行対象として機能していると考えられ、乳幼児期における分離と象徴化についてさら検討をおこなうこととなった。 また、愛着物としての移行対象や就眠時行動、離乳のプロセス、母子間の情緒的関わり合いについてのデータも収集し検討をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
10月の追加採択を受け研究を開始したため、研究協力機関との調整等により、29年度から質問紙調査を実施した。ここから観察研究やインタビューなどを含めた継続的な研究に協力してくれる対象者との調整を始めているため、全体的にやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①音感性の移行対象の様相をとらえるため、質問紙調査と保護者へのインタビューを通して、基礎的データ収集を継続する。 ②情緒的相互関係における言語的・非言語的コミュニケーションの様相を身体感覚の次元からとらえるために、母子相互作用の観察研究および母親の情緒的応答性調査をおこなう。 ③言葉の発達に問題をもつ子どもや自閉症スペクトラムの子どもについてもデータを収集し、他者と共有する言葉と魔術的な言葉や移行対象と自閉対象の比較検討する。
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Causes of Carryover |
研究に協力してくれる機関との調整により調査実施時期に変更が生じたことから、観察研究で使用するデジタルビデオカメラや分析ソフトの購入、縦断的研究協力者への謝金などが当初の予定年度に執行していない。また、29年度の質問紙調査のデータ整理・分析は研究代表者自身がおこない、資料整理補助の謝金を執行していない。 30年度から観察研究をおこなう計画のため、デジタルビデオ等の購入や、縦断的研究対象者への謝金、資料整理補助の謝金の執行を予定している。
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