2022 Fiscal Year Annual Research Report
Clinical psychological research on separation and language that create symbolization of infancy
Project/Area Number |
16K01867
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
黒川 嘉子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (40346094)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2023-03-31
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Keywords | 乳幼児のことば / 移行対象 / 象徴化 / 発達障害 / プレイセラピー / 乳幼児心理臨床 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、言葉がまだ出ていない状態(infant)から,言葉を話し、自身を物語り、他者とコミュニケーションをとるようになる過渡期にあらわれる乳幼児期特有のことばをとらえ、(1)分離のプロセスと言葉,(2)身体感覚をともなう言葉,(3)遊ぶことと話すこと,の3つの研究項目について検討している。 最終年度となる今年度は,これまでの研究において,乳幼児期特有のことばにみられる音の特性が,乳幼児期の相互作用におけるコミュニオン調律(Stern,1985)や音の回路によって共振するsympathy(内海,2015)に機能している重要性を踏まえ,音感性のことばから意味を共有する言葉への分岐点を検討するため,就学前児を対象とする療育機関を利用する保護者を対象に調査を実施した。 その結果,リズムに乗せたjargon様の発話や歌など音感性のことばに対しては,情動調律によってそのときの情動状態を共有し他者と共にいることが可能になるのに対し,他者と共有する言葉に対しては,言語音と意味概念の恣意的な結びつきを共有できず,繋がれなさが際立つ側面が示され,「移行対象としての言葉」(Stern,1985/1989,Dolto,1984/1994)と「自閉対象としての言葉」(Tustin,1972/2005)の質的異同を探求する着眼点を得ることができた。また,自閉対象が移行対象に変化し得ることや,自閉スペクトラム症の特徴のひとつに挙げられるエコラリアも,言語発達を遂げていく一つの段階でも生じることなど,「音」の回路で他者と交感することによって生じる情緒的な交流が,乳幼児期の発達支援の観点からも有効性をもっていることが示唆された。
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