2016 Fiscal Year Research-status Report
食生活と環境化学物質が子ども達の脳神経に与える影響の網羅的な解析
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16K01872
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
酒井 久美子 大分大学, 医学部, 助教 (60225753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花田 礼子 大分大学, 医学部, 教授 (00343707)
千葉 政一 大分大学, 医学部, 助教 (20457633)
酒井 謙二 九州大学, 農学研究院, 教授 (50205704)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 亜鉛 / 安息香酸 / 脳 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、子供たちの学習障害や情緒障害が社会的な問題となっている。私たちはこれらの原因の一つとして、過去の実験結果より、環境中の化学物質「安息香酸亜鉛」が関与している知見を得た。そこでこれらの化学物質の脳への関与を調べるため、亜鉛、安息香酸および安息香酸亜鉛を通常より多めに含む飼料で、長期間マウスを継代飼育している。本年度はこれらのマウス脳海馬を用いて、GC-MS/MS(トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計)により475代謝物を対象にターゲットメタボローム解析を行なった。 コントロール、亜鉛、安息香酸および安息香酸亜鉛の4群のマウス(2-3世代、9-10週齢)から迅速に脳を取り出し、氷上で海馬を切り分け、直ちに液体窒素に保存した。この試料を誘導体化した後、GC-MS/MSのMRMモードで測定を行った。得られたデータで多変量解析を行ったところ、4群を有意差をもって分離することができ、4群がそれぞれの特徴的な代謝系を持つことが示された。さらに、コントロールとそれ以外の3群をそれぞれ比較し、特徴的な変動代謝物の抽出を行った。コントロール群に比較して、特に安息香酸群において有意に変動が認められた代謝物が抽出され、多くはアミノ酸やアミン類であった。 以上、これら化学物質の脳代謝に対する影響を網羅的に検討したところ、特に安息香酸を含む飼料を与えたマウス脳の海馬で、コントロール群や他の群に比べ明らかに有意差のある代謝物が複数見つかり、安息香酸が脳代謝系に影響を与える可能性が強く示唆された。今後は安息香酸が生体内のどの代謝過程で関与したか、その機序を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動解析実験において、やや遅れが生じた。理由は、安息香酸群のマウスで、継代飼育により繁殖能力が減じたため、行動解析に供する個体のn数がそろわなかったためである。メタボローム解析は順調である。遺伝子発現解析は試料を準備中であり、1ヶ月以内にデータがそろう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在メタボロームの測定とおおよその解析が終わっている段階である。今後データをさらに詳細に解析し、抽出された変動代謝物の検証を行う。 さらに遺伝子発現解析用にすでに脳試料の準備が整っているので、この結果もメタボローム解析結果と併せて詳細に検討することにより、安息香酸や亜鉛などの物質が、脳代謝の秩序を乱す過程をパスウェイ解析等を行い、検証していく。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していたマイクロアレイ受託解析の準備が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越額と翌年請求助成金と合わせ、「その他」で、先延ばしとなったマイクロアレイ受託解析、および、新規メタボローム解析の費用とする。
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