2016 Fiscal Year Research-status Report
「間主観性」からみた日本人母子の愛着の実際ー0歳から3歳までの縦断的研究ー
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16K01880
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
伊崎 純子 白鴎大学, 教育学部, 准教授 (00341769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 間主観性 / 母子相互作用 / 縦断的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の母子相互交流を0歳から3歳までの発達のターニングポイントで縦断的に追跡し、間主観性の視点から母子の応答パターンと乳幼児の母に対する内的表象の成立過程を解明することを本研究は目的としている。ここで得られる基礎データは乳幼児健診における愛着障害と発達障害の早期スクリーニングと予防を可能にすると考え、母子相互作用と児童の社会性の発達をビデオに収めている。 平成28年度は、継続して4ヶ月時点3名、8ヶ月時点1名、1歳半時点3名、2歳時点6名、2歳半~3歳時点3名を個別もしくは集団で撮影し、母親へのインタビューを行った。乳幼児の実人数は9名、撮影延べ人数は16名だった。 また、生後4ヶ月以前の様子を縦断的にビデオに収めるため、2組の母子に関しては家庭訪問にて生後1ヶ月から隔週でビデオ撮影を行った。うち1組は家庭の都合で生後2ヶ月時点と3ヶ月時点の2回の撮影にとどまったが、もう1組は生後1ヶ月から3ヶ月まで隔週で10回撮影した。 生後4ヶ月時点のビデオ資料を検討したところ、日本では母子が対面して声でやり取りする場面において4ヶ月児の視線回避が多く、母子による二者関係時よりも第三者を加えた三者関係の時に児の生気情動が活性化することがわかった。このことは第15回WAIMH世界乳幼児精神保健学会(チェコ・プラハ,2016.6)にて報告した。さらに、生後4ヶ月から2歳まで中断なく撮影できた4組の母子について、乳児期早期の関係性は個別性を維持しながら2歳時点の社会性に影響を与え、一貫性が認められる部分と認められない部分があることを第19回日本乳幼児精神保健学会FOUR WINDS(長崎,2016.11)にて発表した。ついで、三者関係の際に観察される母の膝に児が座って共同注視を促す姿勢をカンガルー抱きと呼び注目できることを第26回日本乳幼児医学・心理学会(東京,2016.12)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白鴎大学「人を対象とする研究に関する倫理審査」委員会の承認を得て、同意書等も刷新し倫理的な配慮をより万全なものとなるように企図した。平成26年度より研究協力をしている7組の母子については再度同意を得た上で、中断なく概ね計画通りにビデオ撮影を実施できた。生後1ヶ月からの家庭訪問における撮影は計画通り、2組の協力を得た。そのうち1組についてはほぼ計画通りに撮影を実施できたが、もう1組については予定が合わず撮影回数が計画よりも少なかった。また、現在はビデオ資料の分析が複数の観察者の共通理解に基づく主観的な結果に依拠しており、より客観性を伴う音声分析や行動面のマイクロ分析の進行は次年度以降の課題となった。 学会発表については計画的に実施できたが、論文による成果の公表も次年度以降の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
データの収集面では、生後1ヶ月から撮影を開始した2組については、今後生後4ヶ月からの撮影を継続し、9組の撮影を就学まで継続して実施する。また、もう1組ないし2組の母子を生後1ヶ月から家庭にて撮影できるよう研究協力者を募集する。同時に、収集されたビデオ資料に関して、音声分析やマイクロ分析を進め、統計的な検討を加える。 研究結果の公開については、平成29年度以降は、学会発表のほか論文発表・公刊を目指す。その他、乳幼児健診等、現場への還元を目指し、保健師や母子保健に携わる専門家と協議する機会を設け臨床現場からフィードバックを得て、8ヶ月健診や乳児クラスにおける母子への介入の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
平成28年度に支出予定として計上した金額から差額が生じた理由は主に3点である。1点目は、国際学会への参加渡航費用1名分について科研費の採択を待たずに前年度のうちに大学の個人研究費にて支出済みであったことである。2点目は、生後1ヶ月からの撮影協力者への支払いについて、撮影回数が計画以下となった。撮影協力者に伴う謝礼や研究補助者への謝礼が予算を下回ったことである。3点目は、音声分析やマイクロ分析の手法やアプリケーションソフトの検討に時間を要し研究補助者への謝礼が予算を下回ったことである。物品その他については概ね計画通りの支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
音声分析や映像分析に伴う研究補助者ならびに新たに募集する生後1ヶ月からの撮影協力者への謝礼金が追加され、次年度分の請求する助成金と合わせて使用することを計画している。
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