2016 Fiscal Year Research-status Report
自発的な運動における特徴的な動きから観る発達過程の追跡的研究
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16K01885
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
原 英喜 國學院大學, 人間開発学部, 教授 (40181002)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自発的動作 / GPSデータ / 移動軌跡 / 移動距離 / 移動スピード / go/no-go検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の1つ目は、運動や遊びの状況における子どもの自発的な特徴ある動きを観察し、子どもの動きに多様性が生じてくる①場所、②指導の場面設定を見つけ出すことであった。子どもたちの行動を敷地全体から把握することは、対象とした幼稚園の敷地が広く、斜面や木々が多く全体を俯瞰することはできなかったが、少なくない子どもたちが好んで遊ぶ場所は斜面であったり、木々が生い茂って見通しの悪いところであった。また、遊びの種類によって場所が特定されることもあり、ボール遊びをするときはグランドであると定性的に確認することができた。 2番目の目的である「遊びや運動の環境を整備する要素」は、ブランコや鉄棒、滑り台といった固定された遊具だけではなく、砂場や土の斜面や木々の生い茂る林のような環境であり、平地であっても雨上りの水溜りも好まれることが判った。 3番目の目的である「子どもの動きが発達しやすい環境」は、平面の安全な場所とは限らず、斜度のきつい土の斜面や表面がでこぼこの土、思い切り走り回れるグランドの広さが関わっていると考えられた。 これらの結果を導き出せたのは、子どもの視界に入らないように観察することや研究計画にあり、年度当初から購入したGPSによる位置情報を追跡して記録できる器具(AMBIT3:Suunto社製)を繰り返し使ってデータの取り方や分析の仕方を試みたことで、次年度の計画が円滑に行えるようになった。 さらに、この計画のもう一つの重要な点である子どもたちの認知能力を測るgo/no-go検査を行いその分析方法を確立することであった。これも、得られたデータから評価する際の基準となる反応時間の決定や動作の誤りの数による分類方法を、サンプルデータを取りながら明確な値を決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、目的とする妥当な移動軌跡データを取得することから始めた。位置情報が測定できるGPS機能を持った小型の機器であるAMBIT3(Suunto社製)で試行することができた。まずは成人を対象に行い、次に、幼稚園の敷地でも測定が可能かを確かめ、幼稚園の協力を得て2名の園児に対して試行することができ、地図の上に移動軌跡データを記録することができた。このマッピング方法の確立(AMBIT3利用)により、位置情報を取得する適正なサンプリングタイムの設定や、子どもが持ち歩きやすい方法(機器のベルトなしでコンパクトにしてポケットに入れテープで塞ぐこと )を試行した。その結果、設定時間内における、移動距離、移動速度などを計測することが可能となった。これまで子どもを対象とした研究分野では、活動量計を用いた歩数や活動強度を測定していたが、自発的に遊ぶときの移動軌跡や移動速度を捉えたものはほとんど発表されていないので、先駆的な研究となろう。本研究と並行して行っていた「子どもの運動能力獲得過程の継続的研究」と相まって、前年度までの結果の分析を進めて、2016年9月24日に「幼児の3年間の発達過程の追跡的研究」として第71回日本体力医学会で発表した。英文抄録「A longitudinal study of the developmental process of children for three years」として体力医学会の機関誌「体力科学」26巻に掲載された。 山形市や鹿屋市、石垣市でも協力者を見つけて、生活習慣の異なる場所における測定調査の準備を行う予定であったが確定していない。 認知機能の評価に用いるgo/no-go検査については、測定する反応時間データの誤反応として判断する値を0.1Vに決定する判断を、これまでの2000件を超えるデータの検討から連携研究者の野井教授と決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年までのGPS機器から得られたデータの結果を受けて、対象とする幼稚園内の子どもの動きの詳細な分析をすると、子どもが好む遊び場の特定ができるようになる。そこで、特定したその場所にVTRカメラを設置することができるようになれば、カメラを子どもの視線から気付かれにくい場所にセットすることで、自発的な多彩な動きの収集が可能となる。GPS機器のデータからは動きの移動距離の他、瞬間スピードが算出されるはずであり、データ解析方法を決定していく。対象施設のなかで、本研究への協力者(園児の保護者や活動に参加している保護者)を募集し、承諾が得られる対象者に対して、これまでも利用した成育歴や現在の生活習慣アンケートへの回答を依頼する。録画された映像からは、特徴ある遊びの種類や身のこなし方を見つけ出し、動きの熟練度の変化を観察・分析する。さらに、go/no-go検査を行い大脳前頭葉の働き具合を類型化する。遊びに見られる行動と生活習慣や成育歴とgo/no-go検査のデータを集計して類型別の行動パターンを見出すことができるか分析検討を行う。さらに、活動量計と同時にGPS機器を保持してもらえれば、これまでの歩数から観た動きと実際の移動距離や移動の速さの関係が導き出されることも検討してみたい。 発育に伴い、行動範囲の広がりや移動速度のスピードアップ化が予測されるので、居住環境の大きく異なる山形市や鹿屋市、石垣市といった場所に協力者を拡げて遊び方や保育の違いとgo/no-go課題への反応の違いを比較検討する。2017年度中に対象となる場所を探し、理解を得て観察やアンケート、go/no-go検査への協力を依頼する。 派遣研究期間(2017年度)を利用し、教育環境が大きく異なる北欧(フィンランドを考慮中)を訪問し、養育方法の違いがどのように行動に表れるのか視察する。
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Causes of Carryover |
物品の購入に際し、見積もりを複数社から取って安価ところから購入したため、若干の金額が次年度へと送られる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度におけるアルバイト費用に充てて活用する予定である。
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Research Products
(2 results)