2017 Fiscal Year Research-status Report
自発的な運動における特徴的な動きから観る発達過程の追跡的研究
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16K01885
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
原 英喜 國學院大學, 人間開発学部, 教授 (40181002)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | GPS / 移動速度 / 移動距離 / go/no-go検査 / 自然環境 / 科目横断型授業 / フィンランドの教育実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である「発育期の運動能力の獲得」のために、特定の幼稚園内において、「動き」の実態を把握する目的で、GPSセンサーを内蔵した時計を子どもたちに装着した。「自発的な動き」が重要となるために、装着方法の検討も行った。幼児が遊ぶ時にGPS装置を気にしないようベルトを外し、着衣のポケットに入れてポケットをテープで塞ぎ、園内で保育時間中の動きを追跡した。また、園庭内のどこで遊ぶ傾向が強いかを把握するために、移動軌跡を地図上に記録し、頻繁に利用する場所を探った。園児の中で、比較的活発に動きまわる男女5名ずつを担当教員に抽出してもらい分析した。併せて、これまでにも行った活動量計を利用して、歩数も測定した。その結果、10名中2名はポケットの中で誤作動してしまい途中で記録が停止して、装着方法に工夫が必要なことが分かった。データが取得できた8名の結果から、園舎近くの平らな前庭で多く遊ぶ子が2名、園舎から離れたグランドで多く遊ぶ子が4名、園舎から離れた森の中やウッドデッキで多く遊ぶ子が2名であった。グランドへ出る子たちの平均移動距離は4364m、平均歩数は8645歩と全体の平均より約1000m多く、歩数も約1000歩多かった。一方、移動中の最高スピードは移動距離や歩数との関連は見られなかった。子どもの動きを観察するための場所の特定はできたと思われた。 認知機能の指標とするgo/no-go検査については、自然が豊かな石垣島で約40名を測定した。併せて心理的な不安状態を検査するSTAI-Cを実施した。 フィンランドの小中学校を視察することができ、自然環境を日常の学習の中にうまく取り込み、教科ごとに囚われない科目横断型の授業実践を観ることができた。さらに、教員養成課程の大学の教育実習にも立ち会うことができ、自然環境をうまく利用する実践能力の養成に力が入っていることを確認してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、2016年度に行った位置情報が測定できるGPS機能を持った小型の時計(AMBIT3)を用いて、実際に子どもを対象にして測定することができ、幼稚園の敷地でGPSにより得られたデータからマッピング方法も確立して、移動軌跡が記録できることも確認できた。しかしながら、ベルトなしでポケットに入れテープで塞ぐことだけではAMBIT3のキーロック操作が不完全な場合に誤作動することも判明し、多くのデータを収集することができなかったことが、やや遅れている理由である。 運動能力の一端を示す活動量と移動距離や走速度についてのデータ解析方法を確定したことは、研究を進める上で方法論が確立できたことになり、「自発的な特徴ある動き」を捉える場所も特定して、最終年度の行動観察の最終段階を迎えることとなった。 本科研費の基礎となった研究の分析を進めて、平成29年9月18日に「幼児の3年間の発達過程の追跡的研究(2)個々人の追跡」として第72回日本体力医学会で発表した。英文抄録が「A longitudinal study of the developmental process of children for three years.No.2-personal follow-up study-」として体力医学会の機関誌「The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine」Vol.6、No.6に掲載された。 フィンランドへ視察に行き、認知機能の発達に自然環境の取り込みが大切であろうという仮説を裏付ける実践を感じ取ることができ、本研究の目的である「遊びや運動の環境を整備する要素を提示する」と、「子どもの動きが発達しやすい環境の提案」に盛り込む内容を得ることができた。 環境が子どもの認知機能や運動能力の獲得に及ぼす影響が大きく、都市部と比較する場所として、沖縄県竹富町の所管する数校と連携を取る可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立することができた方法を総合的に用いて、例数を増やすことや子どものいる環境が発育発達段階にどのように影響を及ぼしているかをまとめ、子どもたちが自発的に動くことによって運動能力の獲得や発達を得て、さらには認知機能をよりよく発達させるのにも好ましい環境の提案に繋げていきたい。 そこで、まずはGPSセンサー付きのAMBIT3と活動量計を誤作動しないように確実にセットし、協力していただける幼稚園や団体と連携を取り、頻繁に利用する遊び場所に、子どもたちから見えないようにVTRカメラを設置する。そこで、自発的な動きを録画して観察し、分析してその場所や環境の適切性を抽出する。録画時間には機器的に制限もあり、運動に関わる分析を中心とするので、教室や園舎内での活動は対象から除いて、分析に要する時間を短縮する計画である。 自然環境との兼ね合いについては、自然環境が豊かで、子どもたちの認知機能が適切に発達していると思われる沖縄県八重山地方の協力校にて、①認知機能の客観的な指標となるgo/no-go検査、②運動能力、③心理的な不安検査(STAI―C)、④日常生活の遊び場や遊び方のアンケート調査などのデータを採取して、環境と発達度合を総合的に評価し、好ましい発育環境の提案に繋げて行きたい。 時間的な制約はあるが、山梨県や山形県内にも協力を申し出てくれる保育園などの候補となる施設があるので、森林や山といった自然環境の場合についても調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
出張先がフィンランドでユーロ圏ということで、為替レートの見積もりが変更されたこと、フィンランドでの通訳・ガイドの委託費が視察先により異なるために計画と差ができてしまったこと、派遣研究期間であったためにデータ分析に供する時間が減り、アルバイト作業が十分できなかったことにより差額が生じてしまった。 次年度は、調査対象が国内で広がり、旅費や謝金が多くなり、得られたデータ整理に人件費が多くかかると思われるのでそれらに活用したい。
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Research Products
(3 results)