2017 Fiscal Year Research-status Report
乳児の動的音楽性の可視化に関する研究:保育及び子育て現場への適用可能性の探究
Project/Area Number |
16K01886
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
今川 恭子 聖心女子大学, 文学部, 教授 (80389882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 洋子 同志社大学, 研究開発推進機構, 研究員 (60134326)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音楽性 / 音声分析 / 音楽的発達 / 乳児 / 音声相互作用 / 幼児 / 子育て / 保育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,間主観性の生得的基盤を音楽的であるとするTrevarthenとMallochのCommunicative musicality概念(Malloch & Trevarthen, 2009)を援用し、乳児―養育者間音声相互作用に見出される音楽性musicalityを可視化して分析し、その成果を乳児保育及び子育て現場に適用する可能性を探求することである。 2年目にあたる2017年度は研究代表者と研究分担者が共同で次のことを実施した。(1) 同志社大学赤ちゃん学研究センター保有の乳児―養育者間音声相互作用データベースを活用し、音声解析ソフト(PRAATおよび音質評価ソフトウェア)を用いたスペクトルの変動及びピッチパタンの抽出を行なった。(2) (1)に研究代表者自身の既収集データを加え、ELANを用いた応答性および「声重ね」の抽出に着手した。(2) 2016年度に無響室を利用して収集した音声データを、音質評価の指標を用いてさらに詳細に分析した。(3) 理論的な基盤となるMallochとTrevarthenの編著書の内容の検討を深めた。(4)「乳幼児を中心とした人間の音楽性」ならびに「音声の可視化」に関する研究発表とシンポジウム、ラウンドテーブルは前年度の発展的な内容で組織して実施した。(1)~(4)を通して、乳児期から幼児期にかけて、生得的に響き合う音楽性から、文化的な表現を支える音楽性への変化を可視化し、理論化につなげる道筋が拓けつつある。 なお、これらの成果のまとめは、研究報告として学術誌に掲載されたほか、研究論文として印刷中、または学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り、2017年度は前年度の実績を踏まえた発展的な分析に着手したほか、あらたな音声データベースの組織的な分析作業も開始した。また、相互作用関係をより明確にするためのソフトウェアの活用にも着手した。ここで得られた知見に基づく学会発表および学際的な研究交流を通して、方法論および理論構築面で大きな進展も見られた。また、理論的な基盤となるTrevarthenとMallochの翻訳書完成に伴って、理論的な考察の深まりも進んでいる。なお、子育ておよび保育現場への適用という点では、分析の深まりが即座に実践への応用に結びつかない面もあるため、実践現場との往還という点で2018年度への課題を残してはいるが、全体としては、当初の計画以上に進展しているところもあり、おおむね順調であるということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記した通り、音声解析の可視化に関しては既収集データに加えて赤ちゃん学研究センター保有の音声データベースが加わったことで、月年齢を通した組織的な分析が進みつつあり、2018年度以降もこのペースで研究を推進していくことが可能であると考える。また、無響室での音声データ収集と解析に関しては、分析の精緻化が進んだことで、今後の同様の音声解析への指針が出来た。ELANの活用はまだ緒に着いたところではあるが、これによって相互作用関係がより明確に可視化されることとなり、ピッチとタイミングの微視的な相互作用関係だけでなく、応答関係や重なりなどにみられる動的な関係性がより明らかになることが期待される。2018年度は更にペースを上げて作業を進めていく必要があるが、本研究における手順がある程度定型化されたことで、今後は作業の速度が上がることが期待される。
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Causes of Carryover |
収集データの音声解析を精緻化をさらに進めるうえで、高度な音質評価が可能なソフトウェアを使用する必要が生じた。最終年度にソフトウェアを購入し、解析作業の仕上げを行なう。
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Research Products
(10 results)