2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲーミングを活用した病弱教育におけるキャリア発達支援プログラム(改訂版)の開発
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16K01888
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
谷口 明子 東洋大学, 文学部, 教授 (80409391)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 病弱教育 / 院内学級 / キャリア教育 / プログラム開発 / ゲーミング / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、病弱児対象のキャリア発達支援プログラム開発を目的とする。平成29年度は、以下の2つの研究を進めた。 〇研究Ⅱ「病弱児の社会的自立における課題」: 昨年度の研究からキャリア形成上の一つの課題として「自分の病気を誰にどのように説明し、支援を要請するのか」という病気開示の問題が明らかになった。この「病気開示」に関して、本年度は質問紙調査(国立がんセンター所属研究者との共同研究)に切り替え、特に就職活動時の病気開示に焦点を絞って検討した。同時に、大学に所属するキャリア・就職支援担当者(就職課スタッフ等)への「病気開示」に関するインタビュー調査を行った。結果は、平成30年度国際学会において発表の予定である。 〇研究Ⅲ「病弱教育における病弱児対象のキャリア発達支援プログラム(改訂版)開発」: 平成29年度は、病弱教育担当教員・病気経験者から構成されるプロジェクトチームを発足させ、研究計画では希薄であったプログラムの理論的基盤、及び研究の方向性について検討した。検討会の結果として、近年教育・心理・看護・福祉等の対人援助各領域において着目される「レジリエンス」を理論的基盤とすること、治療という厳しい状況の中にある子供たちを対象とする教育プログラムには「楽しさ」という側面は不可欠でありゲーム的要素は病弱教育においては有効であることが確認された。また、「病気開示」をダイレクトに扱うには治療プロセス内の時期の問題があること、文部科学省がキャリア教育において育てたい力として掲げる基礎的汎用的能力としては人間関係形成・社会形成能力として位置づけられコミュニケーション・スキルが、病弱児にとっては周囲からの支援を引き出すという、自らの社会的自立を支える重要な機能をもつことも確認された。 レジリエンスに関する文献研究の成果は、学会発表および論文として公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究Ⅱについては、社会参入の入り口である就職活動において、「病気開示」がどのように捉えられているのかという、従来明らかにされてこなかった諸点を示すことができたのは大きな成果と考えられる。 最終年度に向け、現場教員および当事者から成るプロジェクトチームを構成でき、開発体制を確立できたこと、及びプログラムの理論的基盤としてレジリエンス理論を据えて考案していくことが明確になったことの2点は大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として以下の3点を挙げる。 第一に、平成28年度・29年度の研究成果を踏まえ、プロジェクトチームにより、教育現場で活用可能なキャリア発達支援プログラム開発を、現場教員・病気経験当事者との共同研究として、進める予定である。 第二に、病気説明や病気開示、援助要請に関する情報収集は継続的に行い、上記プログラム開発に活用する予定である。 第三に、ここまでの成果を平成30年度は研究者企画の学会自主シンポジウム及びポスター発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
関東近辺の学会開催が多く、想定よりも出張旅費がかからなかったことが最大の要因である。30年度は国際学会参加及び発表、国内学会シンポジウム開催経費、国内学会参加旅費として執行予定である。
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