2016 Fiscal Year Research-status Report
放射線発がんリスクは被ばく時年齢によってなぜ変わる?-小脳発生過程から紐解く-
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16K01905
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
鶴岡 千鶴 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 研究員(任常) (60415411)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線 / こども期被ばく / 小脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
こどもは成人に比べいくつかの臓器において放射線被ばくによる発がんリスクが高いことが知られているが、その機構は十分にわかっていない。そこで本研究では、脳腫瘍(髄芽腫)を自然発症し、さらに放射線被ばく後に髄芽腫を高頻度に発生するPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスを用い、被ばく時年齢が異なることによる発がんリスクの違いを腫瘍発生メカニズムの観点より明らかにすることを目的とする。具体的には、放射線照射後の髄芽腫発生過程を自然発症および放射線誘発髄芽腫前駆細胞に着目して解析し、(1)なぜ放射線被ばくで髄芽腫のリスクが高くなるか? (2)なぜ被ばく時年齢で発がんリスクが変動するかを明らかにし、放射線防護、特にこども期の放射線リスク管理に重要な基礎データを提供する。 平成28年度は「放射線が前がん病変形成に及ぼす影響」を明らかにするため、自然発生前がん病変と放射線誘発型前がん病変の同定を行うための条件検討を行った。また、髄芽腫のがん起源細胞である小脳・外顆粒層の顆粒細胞における放射線初期応答を明らかにするため、動物実験を開始し一部サンプルの回収を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画調書の研究計画・方法③「自然発生前がん病変と放射線誘発型前がん病変同定」を行うため、免疫組織化学染色およびDNA FISH法の検討を行った。しかし実験方法の確立には至らなかった。そのため、マイクロダイセクション法により前がん病変を採取し、すでに実験系の確立しているLOH解析法およびゲノムコピー数の解析により同定を行うこととし実験を開始した。実験に使用するサンプルはすでに採取済みである。 次ぎに、研究計画調書の研究計画・方法①「顆粒細胞の放射線初期応答」の実験を開始した。また、「H28年度研究実施計画」において、実施を計画していた研究計画調書の研究計画・方法②「顆粒細胞の増殖と移行」に関しては、実施をできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、研究計画調書の研究計画・方法③「自然発生前がん病変と放射線誘発型前がん病変同定」のための実験を生後1日齢、4日齢、10日齢とすべての被ばく時年齢で行い、結果をまとめる。 次ぎに、研究計画調書の研究計画・方法①(顆粒細胞の放射線初期応答)および②(顆粒細胞の増殖と移行)のサンプリングをすべての被ばく時年齢で実施し、免疫組織化学染色を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画調書の研究計画・方法③「自然発生前がん病変と放射線誘発型前がん病変同定」のために免疫組織化学染色およびDNA FISH法を行う予定だったが実験系の確立に至らなかった。そのためマイクロダイセクション法による実験系に変更したため、研究計画実施の遅延および消耗品の購入項目の変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロダイセクション法およびLOH解析を行うための、分子病理学および分子生物学解析用の試薬を購入する。
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