2017 Fiscal Year Research-status Report
動物細胞の時計リズムのNO、COシグナルによる制御機構の解析
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16K01917
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
佐上 郁子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (10143033)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 体内時計 / 時計転写因子 / ヘム / 一酸化炭素 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでマウス Per2, Bmal1 遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域(それぞれNPAS2(CLOCK) /BMAL1の結合する E-box, Rev-erbの結合する RORE を含む)をルシフェラーゼ遺伝子上流に導入したリポーター遺伝子を安定に発現するNIH3T3細胞株を樹立し、時計遺伝子発現のリアルタイム追跡系を構築した。細胞同調から24時間後にCO発生試薬のCORM2を培地に添加したところ、Per2、Bmal1の発現リズムの位相が前方に動き、その発光強度の減少が見られた。さらに、ChIPアッセイを用いてNPAS2、BMAL1とPer2 E-boxとの結合量を調べたところ、CO処理によってDNA結合量は減少した。これらの結果から、細胞内で実際にCOシグナルによってNPAS2/BMAL1のDNA結合活性が阻害され、内在性リズムが調節されることが明らかになった。また、生体内ではCOはヘムオキシゲナーゼHOによる遊離ヘムの分解によって生産されることから、そのHOの基質となるheminや阻害剤の亜鉛プロトポルフィリン (ZnPP) 処理による効果の解析も同様に行った。同調から24時間後hemin処理するとCORM2を添加したときと同じくPer2の発現リズム位相が前方にシフトし、反対にZnPP処理によってPer2発現の位相が後方シフトした。このことから、HOの基質であるheminや阻害剤のZnPPを処理することで内在性のCO生産がそれぞれ促進あるいは抑制され、CORM2による効果と一致した影響を時計リズムに与えたと考えられる。さらにNOの時計リズムに対する効果を解析したところ、Per2、Bmal1の発現リズムの位相は、それぞれ後方、前方に動きCOと異なることが示唆された。現在、その詳細を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体内時計リズムの制御因子であるPer2, Bmal1 遺伝子の発現リズムに対するリズムに対するCOやNOの異なる効果をリアルタイム観測することができた。特に、ヘムの代謝促進あるいは阻害によって変動するCO濃度レベルが、時計リズムの制御因子になることを示した。さらに、CO存在、あるいは非存在下でPer2 プロモター上のE-boxへのNPAS2、BMAL1の結合をそれぞれの特異抗体を用いたChIPアッセイで解析し、Per2発現の上昇期(同調後24時間)に対するCO効果が NPAS2 のDNAへの結合を介したものであることを示した。また29年度予定していたCLOCKのPer2 E-box結合活性についても、CLOCK抗体を用いてChIP アッセイを行った。その結果、CLOCKのPer2 E-box結合活性がCOにより阻害されることがわかり、in vitroでは検出できなかったCLOCKへのCO効果が明らかになった。さらに、Per2, Bmal1 遺伝子の発現リズムに対するNOシグナルの効果を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)同調後24時間後、あるいは36時間後のCO添加ではPer2発現リズムのフェーズがそれぞれ前方、後方に動いたことから、添加時間によってCO効果は異なることが示唆される。この効果がNPAS2, CLOCK, BMAL1転写因子の機能とどのように関連するか確かめるために、COの投与後の経過時間によって、ChIPアッセイによるNPAS2, CLOCK, BMAL1転写因子のPer2 E-box への結合状態を追跡する。 (2)NOの効果について、Per2遺伝子のプロモーターにある E-box 領域への NPAS2 の実際の結合を NPAS2 抗体を用いたクロマチン免疫沈降法 (ChIP)で、 また Bmal1, Npas2 遺伝子のプロモーターにある RORE への Rev-erbβ の実際の結合を その特異抗体を用いたChIPアッセイで、経時的に解析する。 (3)HO-1 および NOS の過剰発現系をPer2発現細胞に導入しその影響を解析する。
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Causes of Carryover |
初年度の交付額が減ったために設備を購入できず、その費用分を消耗品等に回した。そのため、予定より消耗品費用が多くなり、交付額の少ない最終年度に順次繰越をした。 特に次年度に計画している ChIPアッセイに用いる数種類の特異抗体や遺伝子導入試薬等は高価であるため、その消耗品費に当てる。
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Research Products
(3 results)