2016 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア活性増進という観点からの変形性関節症治療と分子的基盤の解明
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16K01924
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
下畑 宣行 立命館大学, 生命科学部, 任期制講師 (30419709)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨軟骨分化 / ミトコンドリア / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症は、関節部に痛みを伴う疾病として代表的なものの一つであり、関節軟骨がすり減ることによって生じる関節部の慢性的な炎症が引き金となって起きる。近年、関節軟骨組織の軟骨分化を促進する一方で、骨分化へと繋がる肥大分化を抑制する低分子化合物TD-198946 (TD) が発見された。しかし、TDの標的因子も含め詳細なメカニズムは未だ不明であった。先行研究において、TDと直接相互作用するタンパク質の同定が磁性ビーズ及びプロテオミクス的手法を用いて実施されたところ、TD相互作用タンパク質候補として、複数のミトコンドリアタンパク質が同定された。その後の解析により、TDによってミトコンドリアタンパク質間の相互作用が亢進することが明らかとなり、この作用がTDの有する軟骨分化促進効果に関与していることが示唆されている。本年度においては、以下の1及び2に関して研究を実施した。 1.これまでにこれらのミトコンドリアタンパク質のリガンドとして幾つかの低分子化合物が報告されており、その中の一つであるAFに関して、軟骨分化促進効果を有するかどうかを解析した。 2.これらのミトコンドリアタンパク質の軟骨分化への関与を、プラスミドからの過剰発現系によって確認した。 1に関して、マウス間葉系幹細胞及びマウス骨芽細胞株をAFで処理し、トルイジンブルー染色法、ALP染色法、RT-PCR法によって解析したところ、軟骨分化マーカー発現や軟骨基質産生の昂進だけでなく、骨分化マーカーの発現昂進が見られることが分かり、TD標的ミトコンドリアタンパク質の結合部位によって、軟骨分化・骨分化の遷移が生じることが示唆された。2においては、マウス間葉系幹細胞株において、ミトコンドリアタンパク質を発現すると、有意に軟骨分化マーカーの発現が上昇することが分かり、これらのミトコンドリアタンパク質が軟骨分化に直接に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画においては、新たな軟骨分化促進低分子化合物のスクリーニングを実施することを計画していた。我々は、TD標的ミトコンドリアタンパク質に着目することで、実際に軟骨分化を促進する新たな低分子化合物を同定することに成功した。しかし、新たな軟骨分化促進化合物であるAFは、軟骨分化だけで無く、骨分化促進作用を有することが分かり、我々が注目しているミトコンドリアタンパク質は、軟骨だけでなく骨分化にも関与することが示唆された。 TD標的ミトコンドリアタンパク質をマウス間葉系幹細胞株において過剰発現することで、軟骨分化マーカー発現が昂進することが明らかとなり、これらのミトコンドリアタンパク質が直接に軟骨分化に関与することが示唆された。また、これらのミトコンドリアタンパク質をマウス間葉系幹細胞株、ヒト胎児腎由来細胞株などで過剰発現すると、いずれの細胞においても細胞増殖活性が昂進することが分かり、これらのタンパク質の量的な増加によってミトコンドリア活性が大きく変動する可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において検討を開始した、TDとミトコンドリアタンパク質によるミトコンドリア活性の変動解析と、軟骨分化への影響を引き続き調べていく。また、TD標的ミトコンドリアタンパク質に着目した新規軟骨分化促進低分子化合物のスクリーニングも併せて行っていく。
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Causes of Carryover |
計画は順調に推移したが、複数の業者から相見積もり得て最も安い機器を購入することや、業者のキャンペーンなどを利用することなどによって、試薬や実験機器を安く調達することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験規模を若干拡大して行うことを考えており、その拡大分に充当する予定である。
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