2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K01929
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三谷 恭雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (10358103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (30356985)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発光生物 / ゴカイ / ルシフェラーゼ / ルシフェリン |
Outline of Annual Research Achievements |
生物発光を利用した生体イメージング等が広がりを見せ、多くの成果を挙げている一方で、特に海棲発光生物では発光分子機構が未解明な種が多く残されている。中でも富山湾を中心に生息が確認できている発光ゴカイは、発光粘液を分泌するが、その分子的実体はこれまでほとんど解明されていなかった。この発光液は他に類を見ない発光色(510 nm)と発光強度を持つ特徴的な系であると考えられるが、発光ゴカイの出現時期が極めて限定的なことなどから従来の生化学的手法を適用するためには、量の確保が困難であった。これに対し、我々は発光液に含まれるタンパク質のアミノ酸配列決定と次世代シーケンサを組み合わせた手法により、他のタンパク質と全く相同性を示さない、新規なルシフェラーゼ遺伝子を同定・単離し、組換えタンパク質としての発光活性を確認してきた。さらに、本課題においては、発光液のLC-MS/MS解析により、発光ゴカイルシフェリンの推定構造を明らかにするとともに、それに基づく有機化学合成を行い、発光活性を示す低分子化合物の取得に向けて研究を進めている。富山湾にて採取したゴカイを有機溶剤に浸すことでルシフェリンを抽出し、組換えルシフェラーゼを用いてその活性を確認するとともに、安定性試験等を実施した。抽出したゴカイルシフェリンを含む溶液をLC-MS/MS解析に供し、構造推定を行った。現時点までに、予想される化合物の基本骨格の有機化学合成を終えており、今後、側鎖部分も含めた合成を進め、活性測定に供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基質溶液は夾雑物が少なく、液体クロマトグラフィーにより活性を示す画分を分離することができた。LC-MS/MS解析により、複数のルシフェリン候補化合物構造を推定することができており、まずは基本骨格部分の有機化学合成を実施した。さらに、側鎖構造等についても文献情報を中心に検索し、合成計画を立て、有機化学合成を実施しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
予想されるルシフェリン構造に基づいて有機化学合成を進める。特に側鎖部分については、情報が少なく合成に時間を要しているが、合成自体は不可能ではないと考えられるため、継続的に合成を進め、出来次第、発光測定を行い、発光活性を示す化合物を特定するとともに、特許出願等を進める。
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Causes of Carryover |
当初予想した以上にゴカイ発光液に夾雑物が少なく、LC-MS/MS解析が順調に進み、このステップに見込んでいた経費を節約することができ、次年度の有機化学合成等に重点を移すこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
有機化学合成段階で、いくつかのバリエーションがあることから、重点的に執行を進める。また、発光ゴカイは中米や米国西海岸にも生息することが知られることから、適宜、共同研究などによりそれらについて、国産との相違も明らかにしていきたい。
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