2016 Fiscal Year Research-status Report
エチレンの「三重反応」を誘導する新規物質EH-1の作用機構解明と実用化研究
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16K01936
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
王 敬銘 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (20300858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
鈴木 龍一郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70632397)
上田 健治 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (80279504)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物ホルモン / エチレン / 三重反応 / 植物成長調節剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「三重反応」誘導活性を示す化合物の構造活性相関解析研究を中心に以下2点の研究を行った。 1、EH-1のナフチル基構造変化と生物活性 本研究の第一の課題はライブラリースクリーニングで発見した植物「三重反応」誘導活性を示すEH-1の生物活性を向上させることである。そのため、本研究では、EH-1の化学構造に修飾可能なナフチル基に着目し、その代わりに様々な置換基を挿入できるフェニル基を有するEH-1誘導体の合成研究を行った。アルキル基、フッ素や塩素など様々な置換基を挿入したフェニル基を有するEH-1誘導体25種類を合成した。合成した化合物の「三重反応」誘導活性を評価の結果、アルキル基やフッ素原子を導入したフェニル誘導体はナフチル基を有するEH-1より低い生物活性を示した。一方、塩素原子をフェニル基に挿入した合成化合物はアルキル基やフッ素原子を挿入したフェニル化合物より強い生物活性を示した。特に3,4-ジクロロフェニル誘導体がEH-1と同程度の「三重反応」誘導活性を示した。フェニル基はナフチル基より水溶性が高いことから、植物細胞への移行性が高い。本研究で見出した3,4-ジクロロフェニル誘導体は、生物活性の面においてEH-1と同程度であるが、植物細胞への移行性については、EH-1より優れている。 2、ピラゾールN-1位の化学修飾と生物活性 EH-1はN-1-メチルピラゾール部分構造を有しており、N-1-メチル基の化学修飾ができるため、本研究ではメチル基の代わりにアリル基やイソブチル基など4種類の誘導体を合成した。合成した化合物の「三重反応」誘導活性を評価の結果、N-(1-アリル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イルメチル)-N-メチル-3,4-ジクロロベンゼンスルフォアミドが強い「三重反応」誘導活性を示し、EH-1の約5倍程度強い活性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の第一の課題はライブラリースクリーニングで発見した「三重反応」誘導活性化合物EH-1の生物活性を向上させることである。この課題を解決するため、今年度では、ナフチル基とピラゾールの構造修飾を焦点に計29種類のアナローグを合成した。ナフチル基の構造修飾を行うため、アルキル基、フッ素原子や塩素原子を導入したフェニル誘導体25種類のアナローグを合成した。合成した化合物の植物細胞への移行性が向上したが、これら化合物の生物活性を検定したところ、明瞭な活性向上効果が認められなかった。ナフチル基の構造修飾は予想以上に手間がかかり、研究の進展を遅らせた。一方、ピラゾール部分構造の化学修飾研究では、合成した化合物の「三重反応」誘導活性の向上に貢献した。EH-1より5倍程度活性の強い化合物N-(1-アリル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イルメチル)-N-メチル-3,4-ジクロロベンゼンスルフォアミドを発見した。このことから、EH-1をリード化合物とするこの系統の「三重反応」誘導活性化合物の活性を向上させるためには、ピラゾール環の構造修飾が重要であることが明らかにされた。以上の結果から、本研究の第一関門であり、重要な課題である化合物の活性向上させるための重要な糸口を見つけた。現在、ピラゾール環の構造修飾を中心に、化合物の合成研究を進めている。今後、実用レベルで利用可能な活性化合物を開発し、化合物の作用機構解明研究を加速させる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究で発見したN-(1-アリル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イルメチル)-N-メチル-3,4-ジクロロベンゼンスルフォアミドの化学構造に基づいて、プラゾール環構造の化学修飾を行い、高活性化合物の合成研究を推進することで、化合物の作用機構解明に利用できる化合物を開発する。 また、EH-1蛍光プローブを利用した解析を推進し、植物組織におけるEH-1の作用部位を解明する。具体的には、EH-1の化学構造にナフチル部分構造を有している。蛍光発色団として頻繁に利用されるダンシル基の化学構造と類似したことから、本研究では、ダンシル基をEH-1に導入した蛍光プローブ(EH-1DF)を合成し、それを用いて、経葉散布や根より吸収させるなど様々な薬剤処理方法を駆使して、植物組織におけるEH-1DF受容体の存在部位を蛍光顕微鏡を用いて追究する。 さらに、EH-1処理により特異的発現する遺伝子の解析を進める。次世代シークエンサーを用いたRNA-Seq解析により、EH-1処理、ACC処理(エチレン処理と同効果)、無処理試験区おける遺伝子発現の違いを解析した。無処理試験区に比べ、EH-1処理より発現量が20倍以上増加した遺伝子群をについて、定量的RT-PCR法によって再現性を確認する。加えてエチレン受容体遺伝子の発現量も精査する。
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Causes of Carryover |
発注しようとするロータリーエバポレーターの溶媒回収ユニットが平成29年にモデルチェンジをするため、平成28年度に購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に、ロータリーエバポレーター一式を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)