2017 Fiscal Year Research-status Report
グルコース非依存性がん代謝機構を標的とした小分子阻害剤の開発
Project/Area Number |
16K01941
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川谷 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (50391925)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん / 代謝 / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんに特異的な代謝機構は有望な創薬標的と期待されるが、がんの代謝機構は多様性や適応性などの複雑さを有し、不明な点が多いのが現状である。多くのがん細胞は解糖系が亢進しているが、興味深いことに、ヒト骨肉腫MG-63細胞はグルコースがなくても増殖することを見出した。本研究は、MG-63細胞の代謝特性を利用して、グルコース非依存的ながん代謝機構を標的とした小分子阻害剤を開発することを目的とする。具体的には、MG-63細胞のグルコース非依存性増殖を選択的に阻害する化合物を探索し、得られたヒット化合物の標的分子を明らかにする。候補化合物を用いてグルコース非依存的ながん特異的代謝機構を明らかにし、候補化合物の抗がん剤としての有用性を検証する。本年度は、主に化合物スクリーニングとヒット化合物の作用解析を実施した。 化合物スクリーニングは昨年度に引き続き、理研NPDepoの化合物ライブラリー、微生物ブロスライブラリーおよび微生物ブロス粗精製フラクションライブラリーをおよそ1万化合物スクリーニングした。再現性や選択活性を調べる2次評価を実施し、昨年度のヒット化合物とあわせて18化合物を取得した。 NPL40330は、理研NPDepo化合物ライブラリーよりMG-63細胞のグルコース非依存性増殖を選択的に阻害する化合物として見出した。フラックスアナライザーを用いてエネルギー代謝に与える影響を調べた結果、NPL40330はミトコンドリア呼吸を阻害することが示唆された。セミインタクト細胞および単離ミトコンドリアを用いた解析により、NPL40330は呼吸鎖複合体Iを阻害することが明らかになった。 理研NPDepo微生物ブロス粗精製フラクションライブラリーの16040WBサンプルに活性を見出した。活性成分の単離、精製、構造解析を行い、活性本体を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に化合物スクリーニングと得られたヒット化合物の作用解析を計画し、当初の予定通りおおむね順調に進んだ。化合物スクリーニングでは、昨年度とあわせておよそ26,000化合物のスクリーニングが完了した。ヒット化合物の作用解析では、NPL40330の標的分子が呼吸鎖複合体Iであることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は化合物スクリーニングで得られた他のヒット化合物について作用解析を実施していく予定である。具体的には、化合物の標的分子同定解析や化合物処理細胞のプロテオーム・メタボローム解析等を行い、ヒット化合物の作用機序を明らかにする。さらに、MG-63細胞のグルコース非依存的ながん特異的代謝機構を明らかにするとともに、ヒット化合物の抗がん剤としての有用性をin vitroで検証する。
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Causes of Carryover |
成果発表にかかる旅費が当初見込んでいた費用を下回ったため。この残額は次年度の旅費あるいは物品費として使用する予定である。
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