2016 Fiscal Year Research-status Report
変化する社会環境に対応できる社会性行動の基盤となる神経回路とその調節機構の解析
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16K01948
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻井 武 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (90615717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会性行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
適切な社会性行動には、時々刻々と変化する社会環境の中で社会性刺激を読み取り価値判断を行い、それに基づいて適切な行動を決定し実行する諸過程が必要と考えられる。その適応を伴う社会性行動に関与する神経回路と調節機構をマウスで明らかにし、その回路と調節機能の異常の自閉症などの社会性行動の異常を示す発達精神障害への関与の可能性をヒトのゲノム解析の結果に基づくマウスモデルを使って探るのが本研究の目的である。本年度は、反復社会性刺激のあとに新規の社会性刺激を加えるという行動パラダイムの中で活性化される脳領域とその間の神経回路のつながりを解析し、価値判断の変化とそれに伴う行動決定に関与する領域として前頭前野(PFC)と扁桃体、そして視床を同定した。また、価値判断の変化に伴い視床での神経活動が上がり、逆にPFCでの神経活動が下がることが観察され、またこの活動変化に視床からPFCへの投射が関わることが示唆された。さらに、ドパミンやオキシトシンといった神経調節系がこの回路の活動に影響を与えている可能性が示唆されたため、候補となる受容体の遺伝子発現解析を行ったところ、PFCにはオキシトシン系の受容体が発現していることがわかった。こういった回路と調節系が適切な社会性行動の決定と遂行に重要であることから、社会性行動に異常のあるマウスではPFC,扁桃体、視床を含む回路の形成異常、及び/あるいは、オキシトシン系を中心とした神経調節系の異常が関与していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画通りに進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた結果をもとに我々の持つ社会性行動に異常のあるマウスモデルを使って明らかにされた社会性行動に関与する回路の異常を解析する。但し我々の持つ社会行動に異常のあるマウスモデルのうちGtf2i遺伝子を3コピー持つトランスジェニックマウスについてはその発現が継代中に失われたためそのマウスの新たなる作製が必要である。
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Causes of Carryover |
次年度に必要なマウスの継代維持の途中で実験に必要なマウスの問題が発覚したため、新たにラインの作製が必要となり、そのマウス経費を次年度に持ち込む必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験遂行に必要なトランスジェニックマウスの作製と維持に使用する。
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Research Products
(4 results)