2017 Fiscal Year Research-status Report
尾側線条体の新規機能領域と扁桃体入力の生理的意義-安全信号学習と恐怖条件付け
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16K01957
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
三浦 正巳 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (40291091)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大脳基底核 / 機能領域 / アセチルコリン / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳基底核の線条体は運動機能を担うとともに、習慣形成、行動選択や価値判断にも関わる。そうした機能にはある程度の部位局在があり、機能領域に分かれていると考えられる。背側線条体はストリオソームとマトリックスの機能領域に分かれており、近年、複雑な行動選択にストリオソームが関わることが示されている。また尾側線条体においても、機能は明らかではないが、形態学的に特徴の異なる領域が見つかっている。線条体は大きな神経核であり、その入出力にはおおまかなトポロジーがある。尾側では辺縁系と関連が深く、背側線条体とは異なる機能を担う可能性が示唆されている。これまでに本研究では、背側線条体ではコリン作動性神経の支配がマトリックスでより強く、アセチルコリンの作用もマトリックスで強いことを見出した。このことを支持する生理的なデータとして、GABA性IPSPをみている。ニコチン受容体を介したGABA性IPSPの誘発作用がマトリックスで優位なことを示した。このGABA性抑制性入力はニコチン受容体作動薬では減弱し、アロステリックモジュレーターでは増強した。このことは、背側線条体のストリオソームとマトリックスの神経活動のバランスを、ニコチン受容体関連薬によって調節できることを示唆している。本年度は、コリン作動性インターニューロンの神経活動を調節するイオンチャネルについて報告している。コリン作動性ニューロンは強化学習後に伴って3相性の応答を生じるようになる。過分極により活性化される電流Ihがrebound excitation を促進すること、Ihを阻害すると脱分極応答が小さくなり発火が減少することを確かめた。また尾側線条体でもニコチン受容体の調節作用があることを確かめている。こうした機構は、線条体の生理機能に重要なアセチルコリンの放出を調節する仕組みの一つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線条体のコンパートメントから選択的に電気記録を行ことは簡単ではなかったが、効率的に記録できるように方法を改良した。蛍光タンパクを細胞特異的に発現させた動物を複数組み合わせることで、コンパートメントと特定の神経細胞を同時に同定できるようになった。この方法を用いて、まず背側線条体のコンパートメントのシナプス伝達の違いを明らかにし、コンパートメントと行動異常の関係を明らかにしている。コンパートメントでのニコチン受容体関連薬の作用には偏りがあり、コンパートメントの神経活動に対する作用も異なっていた。この作用の違いを応用することで、コンパートメントの神経活動の不均衡による行動異常を緩和できる可能性を示した。尾側線条体においても、蛍光タンパクを発現させた動物を用いて尾側領域と神経細胞を識別できるようになった。この方法で、尾側のコリン作動性ニューロンへの興奮性入力が、オピオイドとニコチン受容体作動薬によって協調的に抑制されることを見出している。線条体には内在性オピオイドと受容体が豊富に存在している。ニコチン受容体作動薬は、オピオイド受容体作動薬による興奮性入力の抑制効果を増強していることも見出した。また尾側のコリン作動性ニューロンの分布について検討し、特徴的な分布パターンを持つことが分かった。興奮性入力への抑制作用と機能領域を対比し、内在性アセチルコリンの作用を検討している。興奮性入力は、大まかには、背側線条体では運動関連皮質から多く受け、尾側線条体へはより尾側の辺縁系を含んだ領域から受けている。逆行性トレーサーを用いて、尾側への入力をより詳細に確かめている。作年度は、技術的な問題から、遺伝子改変動物の供給が予定より少なかったために進行に遅れを生じていた。設備を更新し計画の実行順序を変えるなどして対応できたため、現在の進捗状況はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
線条体は大きな神経核であり、コリン作動性ニューロンも一様に分布しないことは以前より知られていた。我々は、背側線条体のコンパートメントとコリン作動性ニューロンには、分布やシナプス伝達について特徴的な違いがあることを見いだしている。それによってコンパートメント間の神経活動と行動異常の関連を、細胞レベルで明らかにした。このことや他の研究から、コンパートメントが担う生理機能は、コンパートメントの解剖学的な連絡によって実現されていることは明らかである。尾側線条体では、背側線条体とは、入力を受ける部位が異なることから、その生理機能にも違いがあると考えられている。しかし尾側の線条体での生理的研究は多くなかった。本研究では尾側の機能領域に着目して、尾側コリン作動性ニューロンの特徴を詳しく調べていく方針である。尾側線条体においても、蛍光タンパクを発現させた動物を用いて尾側領域を識別できるようになり、電気生理学的、組織学的に検討を進めている。これまでの組織学的検討により、内側-外側、背側-腹側軸に対して分布密度の違いがあることを確認した。さらに尾側の機能領域との位置関係を検討する。また蛍光タンパクを発現させた動物を用いて尾側の機能領域を識別して電気生理記録を行っていく。興奮性入力の調節機構を調べ、尾側の領域で比較を行っていく。外部からの投射である興奮性入力を、線条体の逆行性トレーサー標識によって検索し、背側線条体への入力と比較していく。背側線条体の異常は、主に運動と行動に障害をもたらすが、尾側線条体に関連した機能は、その解剖学的結合から、情動に関わるものと考えてる。情動機能に変化のある動物で尾側領域を調べることができれば、尾側領域の機能について検討するために有意義な知見を得られるであろう。
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Causes of Carryover |
(理由)昨年度、実験に用いる遺伝子改変動物の繁殖数が、技術的問題から、少なかったため実験の順序を変更した。それによって試薬等の使用量が減り、計画の前半で予算使用額が少なくなった。その後は順調に研究を進めているので、昨年度の繰り越しと同程度の次年度使用額が生じた。 (使用計画)実験環境の整備、実験機器の更新を先に行うこととしたため、予算の使用計画を変更した。計画後半に実験数を多く行う予定なので、試薬等の使用量も当初計画程度に増える見込みである。研究全体ではおおむね計画の範囲内である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Leucine-rich α2-glycoprotein overexpression in the brain contributes to memory impairment2017
Author(s)
2.Akiba C, Nakajima M, Miyajima M, Ogino I, Miura M, Inoue R, Nakamura E, Kanai F, Tada N, Kunichika M, Yoshida M, Nishimura K, Kondo A, Sugano H, Arai H.
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Journal Title
Neurobiology of Aging
Volume: 60
Pages: 11-19
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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