2016 Fiscal Year Research-status Report
自由な眼球運動と物体認知に係る視覚野神経活動との関係
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16K01962
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山根 ゆか子 大阪大学, 生命機能研究科, 招聘研究員 (70565043)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自由視 / サル / 眼球運動 / 物体認識 / サッケード |
Outline of Annual Research Achievements |
人をはじめとして霊長類は外界の情報収集の多くを視覚に頼っている。物体を認識するときには眼球を動かし、特に重要な情報を能動的に選択する。ところが物体認識における眼球運動の影響を調べた研究はほとんどない。「目で見てそれが何であるかわかる」ことの本質に迫るには、眼球運動を許容した条件で視覚性物体認識に関わる複数の脳部位がどのような活動をしているのかを明らかにしなくてはならない。この問題にアプローチするために、自由視中のサルの眼球運動と神経活動を記録した。まず記録した自由視中のサルの眼球運動を解析した。これまでのヒトの自由視中の眼球運動についての研究では、刺激提示後、時間が経つに従って高速眼球運動の大きさがだんだんと短くなり、固視時間が長くなることが知られていた。本研究でサルにおいても、同様の傾向があることが確認された。さらに、固視の位置が物体上であったか、背景上であったかを分類し、高速眼球運動を物体間の移動、物体内の移動、物体と背景間の移動等に分類することで、眼球運動におけるパラメータ(高速眼球運動の大きさと固視時間)と刺激画像との関係を調べた。その結果、刺激提示後の早い時間には、物体間の視線の移動を短い固視時間で行い、その後、物体内での視線の移動が増え、固視時間が増加することがわかった。つまり、刺激提示後の早い段階では画像全体を短時間で広くサンプルするglobal scanが優位であり、その後、画像の一部を長時間注視するlocal scan に変わっていくことがわかった。この現象は、global scan からlocal scan へのスイッチを仮定した隠れマルコフモデルによってよく説明されることがわかった。神経活動については、高速眼球運動の前後での神経活動の変化を検討するための準備として、マルチプローブ電極で取得した神経活動データから個々のニューロンの発火を抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由視中のサルの眼球運動の解析についてまとまり、比較的短期で論文の掲載が決まった。神経活動の解析については、当初行った神経発火の抽出方法に問題があることがわかり、問題の解決と、大量のデータの解析し直しに当初見通しよりも時間がかかったため、詳細な解析がまだ始められていない。しかし、神経発火の抽出部分はほぼ終了したので、今後詳細な解析を始めることができるため、大きな遅れではないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、神経活動の詳細について解析、検討していく。まずは、高速眼球運動前後での個々の細胞の発火頻度の変化を一般化線形モデルにより評価する。つまり、高速眼球運動前後のどの時点で、高速眼球運動のパラメータや、注視中の物体像などの刺激のパラメータにより個々の神経細胞の活動がどの程度説明できるか検討する。一般化線形モデルでうまくいかない場合はベイズ推定の導入も検討している。さらに、複数の細胞の活動を使って、刺激画像のどこを注視しているのか、どの方向に高速眼球運動を行なったかを推定することにより、いつ、どのような情報が記録した視覚領野で処理、表現されているのか検討する。
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Causes of Carryover |
実験、解析補助のための人件費を計上していたが、適当な人材が見つからなかったため、人件費が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き来年度も人材探しを行う。
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Research Products
(4 results)