2016 Fiscal Year Research-status Report
超高磁場MRIを用いた脳血流量・血液量の非侵襲的リアルタイム・イメージング法
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16K01970
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
豊田 浩士 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (10558084)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MRI / 脳血流量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,脳血流量・脳血液量の高速撮像法を超高磁場MRI向けに新規開発し,それらを従来の機能的MRI(fMRI)の短所を改善するような新規fMRI法として確立することである.平成28年度の研究実施計画は,先端的技術の導入により超高磁場MRIの技術的問題点をできる限り克服し,超高磁場MRIシステムに実用可能な撮像パルス系列を開発・実装することである. 超高磁場MRIの技術的問題点としては,RFコイル磁場強度の不均一性,および,RFパルス照射の際の比吸収率(SAR)の増大の問題が挙げられる.特に本研究課題における脳血流量や脳血液量の非侵襲的撮像法の場合には,撮像パルス系列においてフリップ角の大きな反転パルスを多用するため,これら問題は最重要課題となる.平成28年度は,まず超高磁場向けのRFパルスの設計・開発から着手し,それらを用いた超高磁場向けの撮像パルス系列の開発,および,動物専用機への実装,ファントム撮像実験,小動物脳の撮像実験を行った. 一方,超高磁場においては組織横緩和時間がより短縮されるという問題もあり,特にfMRIへの適用の際には,並列化技術による撮像の高速化が要求される.平成28年度は,これまで独自に開発を進めてきた多スライス同時収集法の撮像パルス系列をさらに改良し,本研究課題における脳血流量・脳血液量の計測への適用を可能とした.より具体的には,多周波数帯域励起RFパルスを独自に設計開発し,それをヒト用と動物用の双方の超高磁場MRI装置向けに別々に開発した多スライス同時収集MRI撮像法として実装した. これら,MRI法に関する基礎的研究成果の一部は,特許出願するとともに,平成28年5月の国際学会にて発表した.目下誌上発表に向けての準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画の項目1「超高磁場MRI装置を用いた新規機能的MRI法の開発」に関しては,項目1-a)の「超高磁場用RFパルスの設計」,および,項目1-c)の「多周波数帯域同時励起法を用いた多スライスないし多スラブ同時収集法の開発」についての開発に多くの労力と時間を割くことになり,結果として,項目1-b)「脳血流量,脳血液量の非侵襲的画像化のためのASL法とVASO法の開発」の実施が予定よりも遅れてしまった.特に,ヒトを対象とした動脈スピン標識のための準備パルス系列の磁場均一性の確認,および,それに用いられるRFパルスの比吸収率の面から見た安全性の確保に関しては,平成28年度の計画内容が十分に達成できたとは言い難い状況である.ヒトの頭部という比較的低磁場においては磁場の均一性を保ちやすい部位でさえ,超高磁場環境においては,その磁場均一性を保つことが予想以上に困難であった.特にRFパルスの設計如何により十分対処可能であると考えていたRFコイル磁場(B1)の不均一性の克服の課題は積み残しとなった. また,研究実施効率を上げる理由から動物専用機での開発,実装,検証を優先したために,特に健常人ボランティアを対象とした実験の実施が遅れてしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,平成28年度にやり残した計画項目1-b,およびそれに関連した計画項目1-aについての対処から始める.これらを早急に済ませた後,平成29年度の当初の実施計画に移行する.課題は,「超高磁場MRI対応の撮像パルス系列を実際のfMRIに適用すること」である.また,新規方法を開発する目的は,従来法のBOLD信号を用いたfMRI法の短所を改善・克服することにあるため,本研究で提案する脳血流量や脳血液量の脳機能計測法と従来のBOLD法のfMRIとの比較検討を多角的に行う予定である. 計画項目2-a) 特に動物用MRI装置を用いた実験においては,信号形成における静脈系からの影響をBOLD信号との比較において調査する予定である. 計画項目2-b) 提案法を用いることで脳血流量,脳血液量の絶対値の定量画像を得ることも可能であるため,刺激や課題負荷の無い状況下における脳機能の定量計測,および,その計測精度の改善・評価を行う. 計画項目2-c) ヒトおよび小動物の脳を対象としたfMRI計測において,超高磁場MRIを用いた際には特に問題となる画像歪みや感度不均一性の排除についても,実際のfMRIの結果から得られた知見をフィードバックする形で,再度撮像技術レベルに戻って超高磁場用に撮像方法を調整し,画質改善,高速化,撮像範囲の全脳化のための改良および最適化を加える. 計画項目3) 実施は最終年度になる予定ではあるが,それまでに開発した計測技術を用いて,fMRIのデータを得る.特に,小動物とヒトの脳での機能連関を見る実験を行う予定である.
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Causes of Carryover |
前年度までに終了予定であった前研究課題が1年間延長となったため,その分,平成28年度からスタートした本研究課題の進行がやや遅れた.特に健常人の被験者を対象とした実験が遅れたために予定していた謝金を支払う必要がなかった.この点が次年度使用額を生じた主たる理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,健常人被験者を用いた機能的MRIの実験を予定しており,次年度使用額分は被験者に支払う謝金として使用する予定である.また,平成29年度には,これまでの研究成果を発表するために国内・海外出張を予定しており,その旅費・宿泊費用として,また論文作成・投稿費用として使用する予定である.
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