2020 Fiscal Year Research-status Report
眠りの進化論:霊長類における睡眠文化行動の比較研究
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16K01980
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
重田 眞義 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (80215962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
座馬 耕一郎 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (50450234)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チンパンジー / 夜間睡眠 / 昼間睡眠 / 寝相 / 睡眠時間 / ヒト |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、タンザニア、マハレ山塊国立公園において2019年度におこなった調査で収集した資料を用い、野生チンパンジーが昼夜に作る集団の頭数について分析をおこなった。日中は個体が離合集散するため、集団の平均頭数を算出することが困難だが、分析した4日間(計2216分間)の資料では、単独で行動する時間や、2~22頭の集団で行動する時間が観察され、平均19.8分(range = 1-161分)で集団の構成が変化していた。もっとも長時間観察された集団は5頭の集団だったが、計478分間の観察であり、全観察時間に占める割合は2割ほどだった。チンパンジーは夕方になると樹上にベッドを作成しその上で夜を過ごすが、ベッド作成時点での集団は平均3.8頭(range = 2 ー5頭)だった。チンパンジーは、日中と比べて夜間の移動頻度は少ないことから、夜間を過ごす集団の頭数は、日中で見られる集団よりも、より安定したものといえる。今後、この結果をもとに、夜間を過ごす集団がどれくらい安定した集団なのか、夜間の音声データの分析と合わせて考察をおこなう。 ヒトに関する睡眠行動の実験的データ収集は新型コロナ感染症のために実施することができなかった。 これまでの研究成果の社会への還元については、公開シンポジウムでの講演、一般雑誌への寄稿や、動物園が作成する動画への協力、あるいはテレビ番組への資料提供を通して積極的におこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、タンザニア、マハレ山塊国立公園において収集した資料のうち、昼夜の集団の頭数について分析をおこなった。当初に計画していた昼夜の音声データの分析をおこなうためには、ICレコーダー付近で何頭の個体が集団を作っていたか明らかにする必要があるため、集団の分析を進めた。次の段階の音声データの解析も開始している。室内での実験およびフィールド調査は新型コロナウイルス感染症の影響により遅れが生じたため、次年度への延期が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した野生チンパンジーの観察資料について、以下の分析をおこなう。(1)音声データの分析:ICレコーダーの録音データを分析することで、昼夜の各時間帯の発声頻度を示し、活動/睡眠リズムの基礎資料として記載する。また、録音データに含まれる他の動物の音声を抽出し、チンパンジーの発声に与える影響について考察する。(2)温度環境と光環境の分析:温度と照度の資料を分析し、(1)の活動/睡眠リズムの記録と比較することで、活動性に与える温度/光環境の影響を分析する。 上記の資料をもとに、チンパンジーの昼夜に作る集団について、その活動/睡眠リズムを明らかにする。またヒトの活動/睡眠リズムと比較することで、ヒトの睡眠の進化的基盤を考察する。
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Causes of Carryover |
予定していたヒトの睡眠行動に関する室内実験およびフィールド調査が新型コロナ感染症の蔓延のため実施できなかった。不幸にして次年度にも同様の状態が継続する場合は、これまでに集積した資料の分析と成果発表にのみ注力して研究を終了する予定である。
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Research Products
(3 results)