2017 Fiscal Year Research-status Report
新興民主主義国における軍の民主的統制:欧州モデルと東南アジアモデルの再検討
Project/Area Number |
16K01983
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中内 政貴 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (10533680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木場 紗綾 同志社大学, 政策学部, 助教 (20599344)
安富 淳 一般財団法人平和・安全保障研究所, その他部局等, 研究員 (50704673)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 東南アジアモデルの再検討 / 欧州モデルの構築 / コソヴォ事例研究 / マケドニア事例研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、引き続き理論面での研究を進めるとともに、事例研究を行なった。理論面では、平成28年度に引き続き東南アジアモデル(クロワッサンモデル)の妥当性について再検討を加えて、欧州の新興民主主義国に対する分析を可能にするモデルの構築を目指した。研究分担者の木場と安富はそれぞれ4回の国際学会・国際会議での発表を行い、特に木場は「Theory and Practice of Military and National Development in Asia」と題する国際会議発表においてクロワッサンモデルをベースにした分析枠組みを検討して出席者から好評を博した。 事例研究に関しては、研究代表者である中内が調査対象国の一つであるコソヴォを主な対象として論文「旧ユーゴスラヴィア諸国にみるアクター間の同床異夢」(足立研幾編『セキュリティ・ガバナンス論の脱西欧化と再構築』ミネルヴァ書房、2017年所収)を公表した。また、平成29年度は調査対象国の一つであるマケドニアにおいて政治的な動きが活発となったことから中内が重点的に同国に対する調査を行なった。10年ぶりの政権交代が起こったマケドニアでは停滞していたNATO加盟問題に動きが見られ、権威主義的な傾向が強かった前政権時と比べて軍改革が進展することが期待されている。政権交代自体もEUやNATO諸国の動きが関係している部分があり、欧州モデルの適用の最新事例として注目に値する。 平成29年度までの研究を通して、東南アジアの事例と欧州新興民主主義国の事例とでは、欧州側で国際機構や西側先進国が政府レベルで直接的に介入を行う傾向がみられ、国際NGOの役割や位置づけに差異があると考えられる。これは当然NATO加盟プロセスも影響した結果と考えられるが、より詳細にその理由や効果について検討したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は理論面、現地調査面で概ね計画通りの活動を行うことができ、また研究の方向性の妥当さも確認することができた。理論面では研究分担者の木場と安富が国際学会・国際会議での発表や議論を通じて、東南アジアモデルの精緻化や他の研究者とのネットワーク構築を図っており、妥当な欧州モデルの構築に向けて一定の目処が立ってきた。事例研究面でも、マケドニアを中心に各国の情報を収集しており、東南アジアモデルとの間で共通する点や異なる点が徐々に明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトの予定研究期間の最終年度となる平成30年度は、理論面では東南アジアモデルの修正と欧州モデルの構築を完了させ、それらを事例研究に適用し、さらにその結果を理論面へフィードバックする。理論面ではすでに関係する各国の研究者とのミーティングを予定しており、事例研究も含めたワークショップとして開催することを検討している。このほか、関連する学会発表がすでに予定されており、また、研究成果を論文(ないし書籍)としてまとめることを予定している。
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Causes of Carryover |
主に現地調査の面で未実施分が発生した。これは本プロジェクト参加者のスケジュールと訪問先のスケジュールが合致しなかったことが主な原因であり、平成30年度に不足している情報や資料を補うべく現地調査を行う。また、資料の解読等の面で助手を雇用することで予定していた謝金も執行予定である。
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