2017 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカの難民とホストによる日常的実践に関する国際比較研究
Project/Area Number |
16K01988
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
内藤 直樹 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (70467421)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 食料安全保障 / 市場 / 紛争 / 難民の地域統合 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年2月18日から3月22日まで、タンザニア東部のキゴマ州に位置するニャルグス難民キャンプにおいて、コンゴの長期化難民による市場での商取引に関する現地調査をおこなった。ニャルグス難民キャンプは13万人を超えるコンゴ難民とブルンジ難民が居住するメガキャンプである。このキャンプに暮らすコンゴ難民は、他の難民キャンプの統廃合の結果、1996年からこのキャンプで暮らすに至った長期化難民である。当初はストリートで小規模な商業活動が営まれていたが、2015年に中央市場が整備されたことを契機に多くの難民が、食料品を中心とするさまざまな商品を販売することとなった。援助に依存する難民のほとんどは、新たに商業活動を開始する資金を所有していない。だが、近隣のタンザニア人が所有する商品を信託販売する(ムファジリ・システム)ことで、商業活動に参入できていることが明らかとなった。これは難民の商業活動への参入を可能にする反面、利益の多くを財の所有者に納めなければならないという点で難民ーホスト間の経済的格差を生み出してもいる。本調査の結果、援助に依存した経済状態にある難民による、単なる生存(survive)ではなくよく生きる(well-being)ための資源としての日用品を調達するための商業活動が、難民とホストという他者間に信頼に基づく社会関係を構築する資源となっていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンザニア政府が難民キャンプでの調査に対する統制を強めているものの、1)調査自体は許可されていることと、2)ブルンジ難民の流入による混乱が治まりつつあることから、本研究課題に関する調査の遂行には支障がない。 現在は研究成果の公表にむけた準備を進めている。①『難民研究ジャーナル』等での研究成果公開、②他大学・研究機関と連携した研究成果に関連する博物館展示、③国連等と連携した研究成果に基づく政策提言。
|
Strategy for Future Research Activity |
下記3点を中心とした研究成果の公開と社会還元をおこなう。 ①『難民研究ジャーナル』等での研究成果公開:難民研究に関する主要な研究ジャーナルおよび学術的な商業出版にて研究成果を公開する。 ②他大学・研究機関と連携した研究成果に関連する博物館展示:聖心女子大学と連携した博物館展示の準備を進め、一般社会や学生対象の研究成果公開を行う。 ③国連等と連携した研究成果に基づく政策提言:FAO等と連携して、来年度のTICADにむけた、難民の食料安全保障に関する政策提言を行う。
|
Research Products
(8 results)