2017 Fiscal Year Research-status Report
アメリカの分権的政府間財政関係-道路補助金を事例として-
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16K01989
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
加藤 美穂子 香川大学, 経済学部, 教授 (60453247)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ / 道路政策 / 連邦補助金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アメリカの連邦システムの分権構造を実証的に明らかにするために、伝統的に州・地方政府の役割とされてきた道路政策に焦点を当て、1990年代以降のポスト州際ハイウェイ時代の連邦道路補助金を中心に、連邦・州・地方政府の政策過程と、州・地方政府のイニシアティブについて研究を進めている。2017年度は、2016年度に引き続いて連邦議会公聴会記録、連邦運輸省の資料や連邦議会図書館調査部の調査報告、連邦会計検査院の監査報告、学術研究等の収集と分析を行うと共に、既に行ってきた分析結果をベースとして、以下の成果報告と現地調査を行った。 第1に、2016年度に進めてきた連邦道路補助金の枠組と立法過程における論点、先行事例等に関する検討結果について、アメリカ学会(第51回年次大会、於早稲田大学)において報告を行った。第2に、アメリカでの現地調査を実施し、道路交通政策に関する資料収集と専門家および州・地方政府の政策担当者等へのインタビュー調査を行った。まず、アメリカの政府間関係の第一人者であるGeorge Mason 大学のT.J.Conlan教授に面会し、本研究に対する助言を得た。次に、バージニア州アーリントン郡の環境交通局の政策担当者、および、州議会議員全米協会の道路政策担当者へのヒアリング調査を実施し、州・地方政府における道路政策と都市交通政策の実務と政策プロセスについて調査を行った。第3に、2018年1月に國學院大學で行われた国際セミナーに参加して、連邦運輸省で連邦道路交通政策を担っていたGeorge Mason 大学のS.Edner教授から、連邦政府の政策形成過程や州・地方政府との交渉の実務に関する貴重な情報とコメントを得た。 上記の現地調査等から得られた情報と資料等を整理・検討し、2018年度にその成果を学術論文として公表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2016年度に収集した多数の連邦道路補助金に関する文献・資料の研究作業が順調に進み、学会報告として研究成果の一部を公表することができた。 そして、アメリカでの現地調査において、道路交通政策の前線を担う地方政府の政策担当者へのヒアリングを実施することができ、政策実務に関する多くの情報と連邦補助事業に関わる詳細な政策資料を入手することができた。加えて、州議会議員全米協会の道路政策担当者からも、連邦政府に対する州議会側の政策主張や連邦政府の政策プロセスへの働きかけについて多くの情報を収集することができた。 また、Conlan教授とEdner教授から、アメリカの内政政策における連邦政府側の政策スタンスと州・地方政府の側の主体性を学術研究として実証的に分析する上で重要となるアドバイスを得ることができた。特にEdner 教授は、2002~2010 年度までアメリカ連邦運輸省にて政策実務を担っていたことから、連邦政府と州・地方政府との間の交渉過程などに関する具体的な事例や、連邦政府の政策運用について教示を得ることができた。 これらのアメリカの実務家と専門家のヒアリングからは、当初計画していたよりも詳細かつ踏み込んだ情報と資料を収集することができ、今後の分析作業にとって大きな進展となるものであった。現在、これらの調査で得られた資料や情報の整理と分析を進めており、2018年度に学術論文等として公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、2016年度から収集してきた資料、2017年度のヒアリング調査等で得た情報と資料を分析し、学術論文として公表していく。具体的には、州・地方政府レベルでの連邦道路補助金を活用した道路・交通計画と都市交通政策の展開について分析を行い、特に、コミュニティー・レベルから積み上げるボトムアップ型の合意形成と計画策定、成果評価と監査の仕組み、事業の資金調達における州・地方政府の多様な財源調達手法について、州の多様な政策運営と連邦政策との関わりを明らかにする。 研究成果をまとめるに当たっては、日本国内のアメリカの財政・福祉・医療・教育等を含む多分野の研究者と継続的な研究会・ワークショップを通じてアドバイスを受けながら、分析と論文作成の作業を進めていく。研究成果は、学術論文および学術書の単著の一部として公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
2018年1月に國學院大學で開催された国際セミナーに参加するために、当初の予定よりも国内出張の回数が増え、不足額が生じる見込みとなった。そこで前倒し支払い請求を行ったが、請求額より実質支出額が小さかったため、その差額分が次年度使用額となった。
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