2017 Fiscal Year Research-status Report
現代エジプトにおける政治エリートに関する包括的研究
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16K02016
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 恵美 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 招聘研究員 (00535437)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域研究 / 政治学 / 政治史 / 中東 / エリート / 議会 / イスラーム / 名望家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の課題は、ナセル政権の経済的基盤について、伝統的マイノリティーとの関係から考察することである。対象は大地主(エジプト系)、そしてユダヤ系、アルメニア系、イタリア系などのマイノリティーを中心に行った。まず、ナセルが政権を掌握する前の1940年代後半の株式年鑑から大地主とマイノリティーエリートを抽出し、その情報をデータベース化した。そして、彼らのナセル政権下における政治的な地位を明らかにした。その結果、大地主をのぞき、マイノリティーは政治的な役職を得ていないことが確認された。また、1960年代に段階的に進んだ民間企業の国営化により、マイノリティーの有する企業の多くが国有化されていることが確認された。ただし、ユダヤ系の所有した資産については、ほぼ全てが国有化されたことが確認されたが、1952年の共和国体制の導入から徐々にオーストリアを始めとする欧州、アメリカに資産を移していることも確認された。つまり、ナセルにより企業そのものは国営化されたが、1952年以前と同等の財政規模ではなかったことが予想された。従って、少なくとも接収されたユダヤ系の資産は、ナセル政権の経済的な基盤となるほどの規模ではなかったと思われた。これについては、さらに研究を進め、実態を明らかにしていきたい。平成29年度は、研究を実施するなかで新たな課題も生じた。それは、国営化された企業全体のなかでマイノリティーが所有した企業が占めたのかについて、資料の不足のため明らかにすることはできなかったことである。この課題は平成30年度以降、継続して取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイノリティー出身のエリート層に関する文献による調査は計画通りに進展した。しかし、ユダヤ協会やアルメニア協会の関係者に対するインタビュー調査は、関係者がエジプトに不在であるため実施することができなかった。これについては次年度に持ち越しとなった。また、予定外にリビア系アラブ部族のエリート層に対するインタビュー調査が進展した。この調査についても来年度さらに深める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成30年度に持ち越した29年度の課題を実施する。ただし、現政権のもとではユダヤに関する調査はやや難しくなる傾向があるため、インタビュー調査ができない場合は文献による調査で補いたい。 平成30年度は司法と歴代政権の関係についての考察を実施する。調査は文献によるものが中心となる。またオンラインでベータベースを公開しているものについては、オンラインのものを利用する予定である。
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