2016 Fiscal Year Research-status Report
アメリカの人種暴力の歴史にみる記憶の政治学ーエメット・ティル事件を例に
Project/Area Number |
16K02021
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
坂下 史子 立命館大学, 文学部, 准教授 (10594129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ黒人 / 人種暴力 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、エメット・ティルのリンチ事件(1955年、以下ティル事件)をめぐる記憶継承の問題に関する文献を読み進めつつ、春季休暇中に、ティル事件の舞台となったミシシッピ州の複数都市において、関連する史跡などの観察調査を行なった。例えば、サムナー市のEmmett Till Interpretive Center主催の巡礼ツアーでは、事件の契機となった商店跡、拷問・殺害が行われた場所とされる納屋、遺体廃棄場所と考えられているタラハシー川、葬儀社跡地、裁判が行われたサムナー裁判所などを訪れたことにより、当該事件を地理的かつ時系列的に再構成することができた。また、同センターで開催されたワークショップへの参加、主催者への聞き取り調査、グレンドーラ市のエメット・ティル歴史センター(The Emmett Till Historic Intrepid Center)の常設展示の観察調査などを通して、当該事件の現場であるミシシッピ各都市で事件を記憶しようとする試みの一端を知ることができた。これらの調査のうち、関係者への聞き取りにより得られた知見の一部を『立教アメリカン・スタディーズ』所収の論文「『苦悶する黒い身体』の系譜-モハメド・アリを記憶する」に反映することができたことは、本観察調査の大きな成果であった。しかし他方で、後述する理由により、当該調査は予備的なものにならざるをえなかったため、次年度以降の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、平成28年度は27年度に観察調査したティル事件追悼行事の補足調査を夏季休暇中にシカゴにて行う予定であったが、研究代表者と行事の主催者であったメイミー・ティル・モブリー記念財団(Mamie Till Mobley Memorial Foundation)の関係者とのスケジュール調整が難航した(春季休暇中の都合も合わなかった)ため、この部分の研究課題の遂行を断念せざるをえなかった。そこで急遽、春季休暇中に次年度の研究計画に挙げていたミシシッピ州での観察調査を行うことにしたが、準備が十全ではなかったため、調査は予備的なものにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、ティル事件をめぐる近年のさまざまな記憶化の取り組みを例に、アメリカ合衆国の人種暴力の歴史における黒人の記憶の政治学を考察するものである。ティル事件に関する記念行事や博物館展示、史跡ツアーなどを詳細に検討することにより、当該事件ひいては人種暴力の歴史に関する公的記憶とアメリカ黒人社会のヴァナキュラーな記憶との関係のみならず、彼らの世代間の記憶継承・断絶の問題をも明らかにすることを目指す。 以上の目的から、平成29年度は引き続き文献資料の読み込みを進めるとともに、夏季休暇中に再度ミシシッピ州(ティル事件のローカルな記憶が白人主導で形成される場所)を訪れ、前年度の予備調査を補完することを目指す。また、8月に同地で予定されている"Till The Movie"(仮題)の映画撮影を視察し、関係者へのインタビュー等を行う予定である。さらに、当該年度中(春季休暇中を予定)に、ワシントンDC(公的記憶が形成される場所)またはシカゴ(ローカルな記憶が黒人主導で形成される場所)で資料調査および観察調査を行う。 なお、現時点では春季休暇中の調査地をワシントンDCにするかシカゴにするかは未定である。シカゴでは60年追悼式典を主催した遺族団体へのインタビューを行いたいと考えているが、もともと28年度に計画していたこの調査はスケジュール調整が難航し、28年度中の遂行を見送った経緯がある。今回も同様の事態が起こる可能性を想定して、場合によっては最終年度に行う計画の観察調査を前倒しするなど、柔軟に対応できるように努めたい。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、平成28年度は27年度に観察調査したティル事件追悼行事の補足調査を夏季休暇中にシカゴにて行う予定であったが、研究代表者と行事の主催者であったメイミー・ティル・モブリー記念財団(Mamie Till Mobley Memorial Foundation)の関係者とのスケジュール調整が難航した(春季休暇中の都合も合わなかった)ため、この部分の研究課題の遂行を断念せざるをえなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は夏季休暇中に再度ミシシッピ州を訪れ、前年度の予備調査を補完することを目指す。さらに、当該年度中(春季休暇中を予定)に、ワシントンDCまたはシカゴで資料調査および観察調査を行う。現時点では春季休暇中の調査地をワシントンDCにするかシカゴにするかは未定である。シカゴでは60年追悼式典を主催した遺族団体へのインタビューを行いたいと考えているが、もともと28年度に計画していたこの調査はスケジュール調整が難航し、28年度中の遂行を見送った経緯がある。今回も同様の事態が起こる可能性を想定して、場合によっては最終年度に行う計画の観察調査を前倒しするなど、柔軟に対応できるように努めたい。
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Research Products
(6 results)