2019 Fiscal Year Annual Research Report
Factors Which Have Made the Competitive Authoritarian Regimes in South America Stay in Power
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16K02029
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
坂口 安紀 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 主任調査研究員 (80450477)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民主主義 / 競争的権威主義 / 地域研究 / 南米 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南米における競争的権威主義政権の長期化要因について、エクアドル、ボリビア、ベネズエラの比較分析を目的としていた。3カ国はいずれも一定程度競争的な選挙を実施しながら、反政府派やメディアを抑圧し、国家権力間のチェックアンドバランスを弱め、権威主義的政治運営を行ってきた。しかしその後(本研究期間中に)、エクアドルとボリビアでは競争的権威主義政権が終焉を迎える一方、ベネズエラではチャベス派政権が権威主義色を強め、20年を超えていまだ政権を掌握している。 競争的権威主義政権の誕生に関する先行研究と比べて、その長期化に関する議論は少ない。政権維持については資源国要因(再分配政策の拡大)や反政府派勢力の戦略、一方政権交代については経済危機や市民による大規模な抵抗運動などが議論されてきた。しかしベネズエラの競争的権威主義体制はリーマンショックおよび2014年の石油価格急落や、反政府派市民による大規模な抵抗運動に繰り返し直面しているにもかかわらず継続しており、それ以外の説明が必要なことを示している。 本研究で明らかになったのは、ベネズエラのチャベス派政権が、選挙を政権維持のための有効な手段として効果的に使ってきたという点である。チャベス派政権は、明らかに不公平で中立性を欠く選挙方式を事前に公表することで、ボイコットか選挙参加かをめぐり反政府派勢力を分裂させ、その結果弱体化させることに成功してきた。反政府派を分裂させるには、選挙方式が「十分に不公平で中立性に欠く」必要があり、さらに、従来の選挙不正のように隠すのではなく、それを反政府派に事前に十分アピールする必要がある。この戦略は反政府派を分裂させるために有効で、その結果政権の継続に貢献してきた。 本研究の成果は、学会発表(論文)、雑誌掲載論稿、講演会、2020年内に出版予定の単著(2019年度内に執筆済み)などに反映されている。
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Research Products
(6 results)