2017 Fiscal Year Research-status Report
「女性の貧困」を捉える:世帯内資源配分に着目した実証研究の方法の開発
Project/Area Number |
16K02030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鳥山 まどか 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (40459962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 伊智朗 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (20199863)
丸山 里美 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20584098)
田中 智子 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (60413415)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 女性の貧困 / 世帯内資源配分 / 家計 / 家庭内役割遂行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、世帯内資源配分の点から女性の貧困を実証的に捉えるための研究方法の検討と開発のために、29年度は以下を行った。 1.先行研究の検討:28年度に引き続き、日本およびイギリスにおける世帯内資源配分研究の検討を行った。世帯内資源配分研究は大きく、①世帯内資源配分のプロセスに関する研究(家計管理役割を誰がどのようなかたちで担うか、それはどのように決定されるかなど)と、②その配分の結果に関する研究(世帯員それぞれの消費や剥奪など)に分けられることを確認し、それぞれの研究方法を検討した。また、イギリスでは、世帯内の時間配分と貨幣配分を重ねる形で女性の貧困を捉える試みがあり、そうした研究の調査方法や分析方法についても検討した。 2.家計相談に関する調査:貧困・低所得世帯への支援として家計相談が位置づけられつつある。女性は世帯内で家計管理役割を担うことが多く、したがって、家計相談の直接の対象となるのは女性が多いと考えられる。家計相談が貧困・低所得世帯への支援としてどのように制度化されるかは、女性の貧困に大きく影響し得る。そこで、日本およびイギリスにおいて、生活相談支援を行っている機関や団体に対し、家計相談に関するヒアリング(相談内容・相談者の特徴、支援の内容と課題等)を実施した。可処分所得が少ないために、そもそも「家計管理」の幅や余地がほとんどない中で支援を行わざるを得ないことが多いこと、また、世帯員が複数いる場合、誰の希望や福祉を優先すべきかという問題に直面すること、その際に家計管理の役割を担う女性の希望や福祉が後回しにされる危惧があることが示された。 3.家庭内役割遂行に関する調査:夫妻間関係に関する調査研究の一環として、夫妻間の家事と育児の配分に関するインタビュー調査を日本と中国で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた「1.先行研究の検討」を進める中で、特にイギリスにおける世帯内資源配分研究、それと関連するTime Povertyの研究、剥奪に関する研究を、「女性の貧困」の文脈で整理することが重要であることが明確になった。そのため、29年度の研究計画を一部見直し、この作業に特に重点的に取り組んだ。新たな研究計画に沿った形で、この作業はおおむね順調に進展している。 また、「2.家計相談に関する調査」を29年度の研究計画に新たに加えた。これは、近年の日本の貧困・低所得世帯を対象とした施策の動向を踏まえてのものである。この調査は「3.家庭内役割遂行に関する調査」とともに、本研究における試行的調査の一環として実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度の研究を進める中で、世帯内資源配分と女性の貧困の関係を議論する際に、経済的なドメスティック・バイオレンスに着目することが方法論的に有効である可能性が浮かび上がってきた。そこで、30年度はこの問題に関する研究実績のある者を分担研究者として新たに加えることとした。 30年度は、経済的なドメスティック・バイオレンスと世帯内資源配分との関係、および、女性の貧困との関係をとらえるための研究方法の検討を追加する。あわせて、経済的なドメスティック・バイオレンスの実態を把握するために、支援者および過去にこの問題を経験した人へのヒアリングを実施する。これらはいずれも、研究方法の開発のための「試行的調査」に位置づく。これは日本およびイギリスで行う。また、これまで、世帯内資源配分に関するイギリスの研究を検討してきたが、現在の研究の到達点や実態把握の方法と課題について、研究者からのヒアリングをイギリスで行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 最終年度である平成30年度に、イギリスでの調査を予定している。また、30年度から分担研究者を1名追加することとしたため、30年度分のみの金額では旅費の不足が見込まれ、前年度から繰越を行うこととし、次年度使用額が生じた。 (使用計画) イギリスでの調査に係る旅費のほか、資料の収集に係る費用(書籍購入、複写、国内旅費)、試行的調査実施に要する諸費用(テープ起こし、調査協力者への謝金)、これらの研究遂行に要する物品(消耗品)購入に使用する。
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Research Products
(9 results)