2020 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における「性犯罪」抑止政策と法の批判的検討
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16K02033
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
牧野 雅子 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70638816)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 性犯罪 / 性暴力 / 刑法改正 / 防犯 / 被害者 |
Outline of Annual Research Achievements |
刑法の性犯罪規定について、今後の性暴力と法に関する議論に貢献すべく、2017年の改正点と残された課題を整理するとともに、性犯罪被害防止対策についての問題をまとめた。 2017年、刑法の性犯罪規定が110年ぶりに大幅改正された。主な改正点は、(1)177条の処罰対象行為の拡大、(2)177条の法定刑の引き上げ、(3)監護者の影響力を利用したわいせつ行為や性交等に係る罰則の新設、(4)性犯罪の非親告罪化、(5)集団強姦罪等の廃止である。被害の現実に即した改正となった一方で、これまでにも問題が指摘されてきたにも関わらず、本改正には反映されなかった問題も課題として残された。暴行・脅迫要件の緩和、性交同意年齢の引き上げ、性犯罪に関する公訴時効の撤廃又は停止、配偶者間においても性犯罪が成立することの明示、刑法における性犯罪に関する条文の位置の変更等である。 2017年の改正は、これまで不当に低く扱われてきた性被害を、適切に刑法に位置づけることが目されており、児童福祉法違反として対応するしかなかった性虐待や、強制わいせつとしてしか見なされなかった肛門性交や口腔性交を、従来の強姦行為と同等のものとみなし、性犯罪の法定刑を引き上げることで被害の実状に見合った処罰が加えられるようにするというものであった。今後の課題として残された論点は、暴行・脅迫要件に象徴されるような、これまで立件自体がされてこなかったものを犯罪化する、いわば、性暴力ではあるが性犯罪として見なされなかったものを、国が性犯罪として認め、被害者を保護し、加害者に適切な処罰を与えるというものであり、性暴力抑止についての根本的な議論を要求するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年に予定していた資料調査が、新型コロナウイルス感染防止対策による、公立図書館の利用制限のために、計画通りに行えていない。2020年度は最終年度であったため、研究期間の延長を行い、計画していた調査は次年度に持ち越し、状況が改善され次第、実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に予定していた資料調査を、新型コロナウイルス感染状況が改善され次第、行う予定である。図書館の利用制限が長期化するようであれば、近隣の図書館に調査対象を絞り、調査を複数回に分けて一回の調査の滞在時間が短時間ですむように工夫するなどして、可能な範囲で資料調査を行う。 当該研究最終年度であり、これまでの研究成果を、学会で口頭発表する他、論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた資料調査が、新型コロナウイルス感染防止対策による、公立図書館の利用制限のために、計画通りに行えなかった。次年度に持ち越した資料調査は、状況を見ながら、適切に実施する。
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