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2016 Fiscal Year Research-status Report

韓国のフィリピン人女性エンターテイナーをめぐるジェンダー・ポリティックスの研究

Research Project

Project/Area Number 16K02034
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

辻本 登志子  京都大学, アジア研究教育ユニット, 研究員 (50749851)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords移住女性 / フィリピン / 韓国 / エンターテイナー / 歌手 / 移住労働 / 人身売買
Outline of Annual Research Achievements

本研究課題は、「芸術興行ビザ(E-6-2)」で韓国に入国し、米軍基地周辺の遊興施設で「歌手」として就労するフィリピン人女性の移住と人身売買に関して、当事者や政府関係者、NGO、そして民間業者等、複数の主体の視点から考察するものである。
駐留米軍の規模縮小と再編に伴い、これまでフィリピン人女性が就労してきた米軍基地周辺の歓楽街が廃れ、人身売買も以前ほど見られなくなっていることが、計二回の韓国調査を通して明らかとなった。一方、フィリピン人女性は、従来の米軍基地周辺の遊興施設だけでなく、全国に拡散していることが明らかになった。捜査関係者やNGO職員によれば、深刻な人身売買は近年、港市や地方都市のカラオケ・クラブなどで顕著になっているという。
今年度は、韓国政府関係者へのインタビューが実施できず、E-6-2ビザに関する政府の立場については、公式資料を通してしか知る術が無かった。しかしながら、過去20年以上続いてきたE-6-2ビザによる人の移動が、非合法および合法的な領域の連続性の上に築かれてきたことが明らかになった。つまり人身売買は、必ずしも違法な業者や犯罪組織によってだけ引き起こされるのではなく、合法的な移住システムのなかに埋め込まれていた。エンターテイナー送り出しに関するフィリピンでの調査では、政府関係者やNGO、そしてフィリピン人女性を送り出してきた仲介業者から話を聞くことができた。
これまで個人の意思に基づいた移住労働の「選択」、あるいは「労働」の問題として議論されてきたフィリピン人女性エンターテイナーの問題を、フィリピンおよび韓国の政府・NGO・民間業者の視点から捉え直すことにより、移住女性を性産業へ誘因する構造や、2004年以降「性売買防止法」によって厳格な取り締まりが行われている韓国の性産業における移住女性の位置についても、今後さらに研究を進める予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本年度は、当初計3回計画していた韓国調査が計2回になるなど、研究計画通りに進まないとこが若干あった。しかしながら、資料収集や関係者への聞き取りなどによって得られた最新の情報をもとに、2004年の「性売買特別法」施行以降の米軍基地周辺遊興施設で働く移住女性たちの現況やその変化について知見を深めることができた。
また、エンターテイナーとして韓国に入国し、基地周辺あるいは地方都市の遊興施設で働く/ あるいは過去働いていたフィリピン人女性たちからも聞き取りを行うことができ、移住労働と人身売買が分かちがたく結びついている「エンターテイナー」送り出しシステムの諸課題について、明らかにすることができた。フィリピンにおいても、法務部(Department of Justice)傘下にある省庁横断的な組織であるInter-Agency Coalition Against Trafficking (IACAT) をはじめとする政府関係者や、長く海外労働と人身売買の問題に取り組んできたKanlungan Centre等のNGOから資料提供を受けたり、聞き取りを実施し、平成29年度からの調査研究への協力を仰ぐ等、布石を打つことができた。

Strategy for Future Research Activity

次年度は、前年度に実施することが難しかった、韓国側の政府関係者への聞き取りを重要課題に据える。「エンターテイナー」あるいは「歌手」として移住する女性たちの問題は、売春や人身売買とも深く関わっており、非常にセンシティブなイシューでもあるので、かの女らの雇用主や受け入れ業者、そして政府関係者はなかなか語りたがらず、特に韓国側からのアプローチは困難であった。しかしながら、前年度の調査研究を通して関係を築くことができた現地協力者の助言も仰ぎながら、政府関係者や受け入れ民間業者等への接触も試みたい。フィリピンでの調査は主に、本年度にアポイントメントを取得することができなかった、韓国へのエンターテイナー送り出しについて詳しい政府関係者および民間業者などへの聞き取りを再度行う。調査活動と並行して次年度は、これまでの成果を学会で発表し、論文として刊行していくことを目標とする。

Remarks

京都大学アジア研究教育ユニット(KUASU)研究員報告書

  • Research Products

    (2 results)

All 2016 Other

All Presentation (1 results) Remarks (1 results)

  • [Presentation] 国際移住労働と人身取引における「被害者性」をめぐって:在韓フィリピン女性エンターテイナーの事例から2016

    • Author(s)
      辻本登志子
    • Organizer
      セックスワーク・セミナー
    • Place of Presentation
      京都大学人文科学研究所
    • Year and Date
      2016-10-29
  • [Remarks] アジアにおける「多文化共生」と「ジェンダー平等」が交差するところ:フィリピン人女性移民に注目して

    • URL

      http://www.kuasu.cpier.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2017/03/tsujimoto_toshiko2016-1.pdf

URL: 

Published: 2018-01-16  

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