2018 Fiscal Year Research-status Report
サークル活動とジェンダーの戦後史―生活・労働・教育の再編と東北・九州の女性たち―
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16K02040
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
増田 仁 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80510560)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農村生活史 / 地域社会学 / 生活記録 / 農村女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
『家の光』をはじめ、高度経済成長期の九州地方で農家女性によって書かれた生活記録に関する文献の収集・分析を行った。まず、『サークル村』等当該期の生活記録やサークル活動に関する先行研究の再検討を行った。次に、丸岡秀子や公民館館長ら生活記録運動の指導者の役割や意図について考察を行った。「生活」に対する問題意識を持つことや農家女性たちのネットワーク形成が意図されていた。その後、生活記録の資料にあたりながら、女性たちが集うこと自体が危険視される当時の農村において、自らの生活を書き記すことが読み手の生活を相対化させる視点をもたらすことや読み手同士のひそやかなネットワーク形成の契機となることが分かった。さらに敗戦後の荒廃の中、都市部から農村に嫁に来たものも多く、農村という生活空間を客観視する(できる)者が書く傾向があり、「農民」のイメージを変容させたいという思いが生活記録を書く動機の一つになっていた。また、『書く』という足跡を残す実践(M.セルトー)を行うに当たり、どこまで事実を描くのかは書き手にゆだねられ、生活記録自体がフィクションとノンフィクションの間に位置するものであることが筆者の手記から実証できた。以上をまとめ紀要に論文を投稿した。 今後は生活記録という「書くこと」を通した生存の実践のみならず労働歌や歌声サークルといった「歌うこと」を通して農村の女性たちが過酷な生活・労働状況を変容させつつ乗り越えていったのかを実証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高度経済成長期における東北地方の生活記録に関する文献収集やインタヴュー調査が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
東北地方の生活記録に関する文献の収集およびインタヴュー調査を早急に進めていく。
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Causes of Carryover |
東北地方での文献収集およびインタヴュー調査が遅れているため。今年度は東北地方での調査を重点的に行っていく。
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