2019 Fiscal Year Research-status Report
サークル活動とジェンダーの戦後史―生活・労働・教育の再編と東北・九州の女性たち―
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16K02040
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
増田 仁 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80510560)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サークル活動と女性 / 高度経済成長期 / 農村生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
溝上泰子著『日本の底辺』を資料として用いた。この著作は溝上が高度経済成長期に大学教員として農村各地で講演等を行う中で知り合った、農家の女性たちの手記をまとめたものである。嫁は「手間」といわれ、単なる労働力としかみなされず、夫婦間でも名前で呼ばれることはなく「コラア」といわれていたことからも、家での地位の低さがうかがわれる。再生産労働においても十人の子どもを産む女性も珍しくなく、堕胎も日常的に行われ、身体的・精神的に大きな負担となっていた。 当該期の農家女性たちが、作文の会や映画を見る会、子供会など、ためにもなり、面白くもあるサークル活動を運営しようと様々な工夫を凝らし、家事などを子どもに協力してもらい、姑らの許しを得て参加し続けていった過程を分析した。このようなサークル活動が、娯楽が少ない農村で、娯楽に近づくことが許されない女性たちの息抜きの場であり、ネットワーク形成の場でもあり続けた。ここに子どもを言い訳にしたり、頼ったりしながら、家庭の外に出ていった農家女性たちの戦略の一端が明らかにされた。 2019年9月に日本教育社会学会にて報告を行い、多くのフロアーと質疑応答を行った。 さらに熊本大学教育学部紀要に掲載された。 今後は、農村社会学・歴史社会学・ジェンダー論等の先行研究を再検討し、これまでに書いた高度経済成長期の農家女性の生活実践に関する諸論文を一つの分析視点からまとめ上げる作業を行い、著書として出版する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究を再検討しながら、これまでに研究課題に即して書き溜めた論文を全体を見渡した視点からまとめ、著書として刊行する作業が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究を分析しながら、諸論文をまとめ上げる視点を打ち出し、個々の論文を有機的につなぎ合わせる作業を早急に行っていく。
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Causes of Carryover |
勤務校での会議や仕事等が休業日にも入り、調査の日数を短くしなければならなかったため。
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