2019 Fiscal Year Research-status Report
同性カップルと子どもに関する縦断調査:クイアな家族形成過程に対する支援の可能性
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16K02041
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤井 ひろみ 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 教授 (50453147)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 家族形成 / レズビアン / 同性パートナー / SOGI(性的指向性自認) / LGBT / セクシュアル・マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究参加者3組に対し、①継続した面接、②インタビュー(各組1回60分程度)、③既存尺度をもとに独自に作成した調査用紙、からデータ収拾を行なった。3組は全て女性、1子(幼児)あり、パートナーあり、であった。妊娠、出産の過程の困難が多様にあり、現在は実両親や同性パートナーの子育てへの協力が良好な状態である。量的データからストレス状況は軽度見られる。今後はこうした状態が、ライフイベントによりどのように変化するのかを、縦断的に定性・定量両面から測定していくが、まずは調査開始期のデータ収拾を終えた段階である。一方で新規研究参加者については、倫理的配慮等の説明の上に、研究参加意思の確認中が2組という状況である。 国外(米国サンフランシスコ)の状況については、米国人研究協力者1名からのヒアリングを9月以降1回/1~2週で実施した。ヒアリングから、米国ではレズビアン女性に比べ、トランスジェンダーの挙示希望や現状把握の困難さが伺えた。 研究途上の成果としては、関連課題である「大阪市民の暮らしと働き方の多様性と共生にかんするアンケート」の結果から、本研究課題と密接である女性同性カップルの結果に焦点を当てて分析をし、その成果を発表した。これにより、本研究課題の研究疑問でもある子育てや家族形成に関する生活の問題に直面しているとの認識は、異性愛女性に比べて、レズビアン・バイセクシュアル女性の方が高いことが明らかになっており、本研究課題の調査結果(インタビュー)とも合致していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究参加者のリクルートは進んだものの、同意を得るにはある程度の期間、熟考してもらう時間を要する事から、昨年度までに生じた進捗の遅れを取り戻すことができていない。 そのため研究参加者数が十分確保できていない状況が続いていることに加え、研究参加同意意思の明示を遅らせたいとの希望者が2名あった。また国内だけでなく、米国サンフランシスコでのデータ収集を計画し、2回/月程度で研究協力者とのweb会議を重ねてきたが、2020年1~3月期において、新型コロナウィルス感染症のリスクが報告されはじめたことから、渡米して現地(サンフランシスコ)でのデータ収集をする計画を、断念することになった。国内においても同様の理由で、対面によるインタビュー計画の遅滞が生じている事から、全体に研究計画の遅れを取り戻すまでに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
国内でのデータ収集は継続し、新たに、単年度(縦断でない)のデータ収集を追加する。具体的には、現在3例の縦断ケースに加え、(1)3例の研究同意を中断しているケースがあるが、リクルートを継続する、また国内外ともに対面での調査が難しい状況が世界的に続く可能性が高い事から、(2)webアンケートをデザインし、対面ではない形での構造的調査を実施する、また(3)webインタビューの実施についてプライバシーの安全性が脅かされることのないよう配慮しつつ検討する。事業年度終了後も、継続してデータ収集をおこなうこととするが、一方で、最終年度となる次年度は、現在まで収集できた3組のデータに関する成果の公表を行う。 特に、「研究実績の概要」で述べた関連課題である「大阪市民の暮らしと働き方の多様性と共生にかんするアンケート」の結果との照合を行い、現状で最新のデータとの比較により、同性カップルの子育てに関する支援ニーズに関する一定の理論的仮説について検討する。
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Causes of Carryover |
研究参加者が、当初計画していた地域よりも研究者の近辺に居住が集中していた事、自宅でのインタビューを希望されたことなどから、国内旅費(交通費)が少額であった。また米国でのヒアリングがwebで実施できたことと、米国の研究協力者の招聘や研究者の現地渡航が、準備が整った期末になってから、前述の通りCOVID-19拡大防止処置により不可能となった事から、国外旅費の費用は次年度に使用する事となった。
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Research Products
(2 results)