2016 Fiscal Year Research-status Report
発掘人骨の古病理学的ストレスマーカーに見える性別役割
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16K02042
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Research Institution | Aomori Chuo Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 珠織 (藤澤珠織) 青森中央学院大学, 看護学部, 講師 (70595694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 かな子 青森中央学院大学, 看護学部, 教授 (80405943)
石丸 恵利子 広島大学, 総合博物館, 研究員 (50510286)
藤田 尚 新潟県立看護大学, 看護学部, 准教授 (40278007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古病理 / 人骨 / 齲蝕 / 梅毒 / ハンセン病 / 関節症 / 骨折 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、出土人骨の古病理学的ストレスマーカーを指標に近世の女性の社会的役割を検証するものであり、資料として江戸時代に飢饉が頻発した旧南部藩領内にある八戸市市子林遺跡、および富裕な町人が埋葬されていた京都市伏見城跡遺跡から出土した近世期の人骨を用いている。2016年度はこれまでの観察データを集約し、齲蝕・関節疾患・ハンセン病などを報告し、その他新資料を追加した。 上記2遺跡の齲蝕について、発症率はどちらも高く3割を超えたが、発症部位に違いがあり、食物残渣を歯冠隣接面や表面から取り除く行為の普及の違いを示すことが予測された。齲蝕の進行は、どちらも軽症であったが、象牙質齲蝕の割合は八戸の集団の方が高く、相対的に重症だった可能性が示唆された。関節疾患についても同2遺跡において複数認められ、変形性脊椎症や変形性関節症の発症要因として、労働をはじめとする活動の習慣と関連付けるための地域的な特徴を考察した。ハンセン病が疑われる事例についても報告したが、この個体には、頭蓋骨や四肢骨にも融解や膨隆の痕跡が残っており、確定には至らなかった。 次に、旧南部藩領内から新たに出土した近世人骨について、性別判定、死亡年齢推定を始めとする基礎データを分析した。最小個体数は11体、性別は男性1体、女性5体、不明5体であった。死亡年齢は壮年から老年にわたり、すべて成人であった。疾患について、男性人骨の第3・4頸椎に、限局性で表在性の炎症痕があった。歯が遺存する個体のほとんどで、歯頸部の齲蝕が多数あり、現代の高齢者に共通する特徴が伺えた。また2体分の下肢骨から身長を推定した。 このほか発掘調査機関において、報告書掲載人骨の所在確認とリスト化を行い、同位体分析担当者との資料調査では当該地域の食性について知見を得た。今後はリストの人骨を実見し感染症やストレスマーカーのデータ収集を進め、同位体分析も並行して実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、当初の目的であった、自身によるこれまでの観察データの集約および旧南部藩領の人骨資料の追加、既報告資料の所在確認とリスト化を進めることができた。また、同位体分析担当者と共に人骨収蔵期間での資料調査を行い、八戸の人たちが食べたであろう動物資源の様相がうかがえ、人骨の遺存状況の確認からも、同位体分析を予定通り進められるとの予測を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き人骨資料の増加を試みるとともに、文献資料の解釈を進め、出土人骨の分析結果と文献情報の整合性の検証をおこなう。平成28 年度に採取の見通しが立った人骨資料について、連携研究者が中心となり同位体分析を実施する。最終的に、出土人骨の分析結果と文献資料による情報の整合性を研究者間で討論しながら検証する。
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Causes of Carryover |
購入を計画していたPCが見積額より低価格だったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
青森県内での資料調査の交通費として使用し、旧南部藩領の人骨資料を実見する機会を増やす。
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