2019 Fiscal Year Annual Research Report
Roles by Gender Recognized in Paleopathological Stress Marker of Excavated Human Bone
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16K02042
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Research Institution | Aomori Chuo Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 珠織 (藤澤珠織) 青森中央学院大学, 看護学部, 講師 (70595694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 かな子 青森中央学院大学, 看護学部, 教授 (80405943)
石丸 恵利子 広島大学, 総合博物館, 研究員 (50510286)
藤田 尚 新潟県立看護大学, 看護学部, 准教授 (40278007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ストレスマーカー / 古病理学 / エナメル質減形成 / 齲蝕 / 梅毒 / 人骨 / 骨考古学 / 近世 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、青森県内出土人骨におけるエナメル質減形成の出現頻度について、性差を念頭に分析した。資料はこれまで同様、近世期に飢饉が頻発した東北北部太平洋側の地域から出土した人骨を用いた。結果、男女の人骨におけるエナメル質減形成の出現頻度に有意差は無かった。 性別を考慮するにあたり参照した文献資料によれば、近世は家の継承が重要視され男児が尊重される傾向があった。これが人骨から実証された例として、九州北部で出土した近世人骨集団では、男性の方が女性よりもエナメル質減形成の出現頻度が低かった。そしてこの傾向は武家社会のみならず、庶民にも浸透していた。一方、東北北部の過去帳をもとに飢饉の際の家庭内での死亡順序を明らかにした文献資料によると、死亡するのは成人男性が最も早かった。ここから、飢饉における食物分配は子どもを第一優先とした可能性が指摘されている。文献および本集団のエナメル質減形成の出現頻度から、東北北部太平洋岸の地域においては、近世期の厳しい生活環境が想定された。本地域の出土人骨に残るストレスマーカーに男女の差が無いことは、過酷な状況の中、性別に関係なく子どもを生かすことを優先した結果を示すものと考えられる。以上は2019年度、論文にまとめ発表した。 このほか、本研究の比較分析に用いた京都市の人骨資料において、観察が不足していた古病理学的指標の追加調査を実施した。特に、遺存状態の良い人骨のエナメル質減形成について、出現歯種や部位を精査したことによりデータを充足した。また昨年度までに採取した東北北部の人骨資料を用い、研究分担者により同位体分析を実施した。本研究課題の期間は終了するが、これらの結果については引き続き分析を続け、近日中の公開を予定している。
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Research Products
(6 results)