2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02045
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
石黒 久仁子 東京国際大学, 国際戦略研究所, 准教授 (90573915)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 女性政策 / 労働市場政策 / キャリア形成 / ジェンダーとマネジメント / 人事管理制度 / 国際比較 / デンマーク / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、デンマーク、スウェーデンを中心とした、各国の女性政策の全体的把握、統計資料の収集分析を実施した。また、World Economic Forumなどの国際組織が出版する統計なども参考にし、各国の特徴を日本との比較から把握することに努めた。 デンマーク、スウェーデン両国において、1960~80年代の労働力不足と、家族政策・労働市場政策関係支出に重点をおいた社会保障政策の確立が、家庭におけるケアの役割を社会化したことが、女性の活用を支える重要な要素であること、それに伴い企業のマネジメント慣行と個々人の選択も、女性の職業キャリアの形成と組織・経済における活用・活躍を促進する要因であることが確認され、それら要因を研究の分析の中心として考察を進めたきた。 当該年度は当初両国においてフィールド・リサーチを実施する予定であったが、より綿密で実効性のある調査に向けたコンタクトの確立と、付与された予算をより有効に使用することの重要性を考慮し、フィールド・リサーチを翌年度(平成29年度)に実施することとした。 本年度は、これまでの研究で得た知見と本研究で新たに見出された情報及び分析視角を基に、学会(9月、Work, Employment and Society)・欧州大学での情報交換(SEAS, University of Sheffield, SOAS, University of London, Leiden University)を積極的に進めた。 また、これまでの研究(平成25~27年度、課題番号25360046)で得たデータと本研究で新たに得た知見を基に、論文(「女性管理職の仕事とキャリア:デンマーク調査からの考察」『大原社会問題研究雑誌』 No. 703, pp.32-49)の執筆を進めた(平成29年4月出版済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の研究の進捗については、本年度実施予定であったフィールド・リサーチを翌年度に繰り越した点において、当初予定より若干の遅れがある。これは、スウェーデン調査のコンタクト、対象をより詳細・的確に定めることにより、今後の研究が更に発展的で意義の深いものになり、更に、付与された予算をより効果的に使用することができると判断したためである。 その他の活動についてはおおむね良好に進んでおり、翌年度に向けて十分な準備ができた。特に、既に蓄積されているデータ(主にデンマーク)を学会発表、論文執筆という形でまとめることにより、問題と論点の整理ができ、次年度以降のフィールド・リサーチと分析をより効率的、効果的に実施できると考える。データ収集については、各国政府発表のデータ、資料に加え、学会・研究会を通じた研究者との情報交換、大使館発信の情報や、在日外資系企業担当者との情報交換、及び新刊を含む書籍講読を積極的に行い、研究の背景を十分に理解することができた。 更に、興味を同じくする海外研究者との交流を通じて、デンマーク・スウェーデンに加えて、ノルウェー、オランダ、イギリス、アメリカなどの欧米諸国、中国、香港、韓国などのアジア諸国・地域の状況についての理解を深めることもできた。また、これらの情報共有・交換を通じ、国境を越えて各国同様に直面していする雇用におけるジェンダー格差の問題についての認識も深まった。これら活動を通じ、今後研究のスコープを広げ、国際共同研究の可能性を検討するなどの新たな方向性も見出された点は大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、両国におけるフィールド・リサーチの実施とそこで得たデータ分析が研究の中心となる。フィールド・リサーチでは、過去に実施した調査同様、プライベート・セクターを中心に企業2社と各社6~9名の女性に対するライフ・ヒストリー・アプローチを用いたインタビューを実施する。更に、対象2国を含む北欧諸国における公的セクターの重要性も鑑み、プライベート・公的両セクターを視野に入れ、公的セクターに勤務する女性、政策担当者への聞き取りも積極的に実施する予定である。また、本研究に関連して調査実施している他国・地域(オランダ、ノルウェー、イギリス、アメリカ、中国、香港、韓国など)についても、フィールド・リサーチの機会を用いて同時にデータ収集することに努める計画である。 各国統計、政策データの収集は継続して実施し、より最新の情報に随時更新していく。 更に、調査、研究から得た知見を基に、随時学会発表(例:平成29年度4月 British Sociological Association、9月 European Association for Asian Studies)を実施し、調査結果の発表と分析の方向性に関する情報交換・意見の収集を目指す。 分析の方向性は、前年度同様、、政策・企業マネジメント慣行・社会における価値観・文化の推移・個人の行動や選択とキャリア形成の各要因の関連であり、この後より幅広く深く分析し、日本における女性活躍・活用推進の状況と比較・分析・検討していく。 最終年度(平成30年度)は、これまで得た知見をまとめ、国内外の学会での発表と、国際ジャーナルへの論文の投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年度について、デンマーク・スウェーデンにおいてフィールド・リサーチを実施する予定であったが、より綿密に調査計画を立て、付与された予算を最大限有効に使用するこため、翌年度(平成29年度)に繰り越し、9月、2月に2回実施する予定としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2回の調査(合計860,000円予定)及び調査データのインタビューテープ起こし(合計160,000円予定)の費用を、平成29年度予算分に加えて使用する予定である。
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