2016 Fiscal Year Research-status Report
18世紀イングランドの別居訴訟―男性専門家たちの働き
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16K02046
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
赤松 淳子 文京学院大学, 外国語学部, 助教 (60723004)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イングランド / 18世紀 / 婚姻の破綻 / チョムリー家 / 別居訴訟 / 夫婦間の虐待 / 文化規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀イングランドの妻たちが夫婦間の別居訴訟において、自身の婚姻上の権利と利益をどのように追及したのかを、弁護士と裁判官の働きを中心に明らかにするものである。 初年度は、3月にCheshire Archives and Local Studiesにて、18世紀のチョムリー家の文書を調査し、ペネロピ・チョムリーとジェイムズ・チョムリーの別居(ロンドン主教裁判所:1736年)に関する当事者、親族、弁護士の手紙(195通)および関連史料を収集した。手紙史料からは、家族財産におけるペネロピの権利、妻の扶養に対するジェイムズの態度、結婚が破綻してからの当事者夫婦とペネロピの父の心理的葛藤が読み取れた。同史料は、教会裁判所にて訴訟手続きをすすめるうでの双方の苦労など、訴訟の舞台裏についても豊富な情報を含んでいる。手紙史料を家族財産・扶養についての関連史料とつき合わせて分析していく、という今後の研究の方向性を確認できた。 さらに本年度は、別居訴訟の一種である虐待訴訟を、18世紀の文化規範という視点において分析し、論文を執筆した。18世紀の共同体的心性、ポライトネス、感受性の文化規範のなかで、原告である妻たちが自らの苦痛という身体的・感情的経験をどのように訴え、「虐待」の法概念にどのように挑戦したのかについて論じた(伊東剛史・後藤はる美編『痛みと感情のイギリス史』東京外国語大学出版会に所収)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料調査が予定通りに終わり、チョムリー家の文書の特徴を把握することができた。分析と執筆の見通しもついた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、National Archivesにて国王代理官裁判所の史料調査を行う予定である。現地にて史料の性質、分量を確認する必要がある。最近、同文書館のカタログで教会裁判所の弁護士の手稿の所蔵を確認した。後者の利用の如何によって、どちらを優先・主軸にして研究をまとめるか、方向性も変わってくる。できるだけ早く同文書館にて調査を行うことが必要である。
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Causes of Carryover |
Cheshire Archives and Local Studiesでの調査が年度末(3月後半)であったため、大学での清算が次年度になされることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
イギリスでの調査(平成28年度3月分、平成29年春季分もしくは夏季分)および研究書の購入を予定している。
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Research Products
(1 results)