2022 Fiscal Year Annual Research Report
Suits for Judicial Separation in 18th-Century England: The Work of Male Experts
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16K02046
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
赤松 淳子 学校法人文京学院 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (60723004)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 18世紀イングランド / 女性と法 / 男性の家族 / 事例研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀のイングランドにおける夫婦間の別居訴訟に関する記録から、当時の妻たちが自身の婚姻上の利益をどのように追求したのかを、男性の法専門家やアドバイザーの働きをとおして明らかにする試みである。最終年度は、18世紀のメディアにあらわされたジェンダーを感情史の観点から分析するための作業を行った。まず、別居訴訟の当事者となった妻たちのメディア上の言説をウェルカム・ライブラリーのデータベースから特定した。訴訟当事者となった自身の立場をパンフレットにて公表し、社会に向けて当時の性規範に対する自身の主張を展開した妻たちの言説から、彼女たちのメディア利用のあり方を考察した。 プロジェクト全期間をとおして、事例研究という方法は本研究の目的を達成するために極めて有効であることがわかった。裁判官の記録の分析は調査時間の制限によりかなわなかったが、個々の訴訟に関わった弁護士の記録を基点として、家族文書やメディア史料にまで分析の幅を広げることができたのは一つの成果である。本研究では、とりわけ18世紀の女性のエンパワメントの様相を男性の家族(具体的には父親)との関係から考察する可能性を示すことができた。もっともそのあり様を18世紀の経験として一般化するまでに至らなかったが、法的権利が制限されていた当時の妻と社会の関係を明らかにするための論点を示すことができた。女性が法を利用するためには様々な能力が必要である。今後、近世社会の文脈において、その能力がどのように育まれ/規制され/方向づけられたかを男性たちとの関わりについてさらに追究していく予定である。
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Research Products
(2 results)