2016 Fiscal Year Research-status Report
移住ネパール人による社会的送金-ジェンダー規範の異なる渡航先から出身地への影響
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16K02047
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
田中 雅子 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (00591843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移住 / 開発 / 社会的送金 / ネパール / 日本 / マレーシア / クウェート / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、移住者が渡航先で身につけた習慣や価値観を出身地に伝える行為である社会的送金に着目し、それを出身地における開発に活用するための条件を明らかにすることを目的とする。移住者の性別や、移住形態、渡航先、またそこでの経験によって、社会的送金の中身やその活用が異なることが考えられる。調査対象として国民の8%以上が国外に移住しているネパールと、そこからの移住先としてジェンダー規範がネパールより緩いと考えられる日本、厳しいと考えられるクウェート、中間に位置づけられるマレーシアを事例として取り上げる。直接的な調査対象はネパールであるが、この事例研究を通じて、社会的送金を開発に活用しようとする際の出身国・受け入れ国の政策や、国際移住機関等による支援事業に対して一定の普遍的な示唆を与えることが本研究の最終的なねらいであり意義である。 社会的送金を開発ツールとして活用するための条件を見つけるために、①ネパールからの男女別の移住傾向の把握、②移住の動機や出身地側の社会的送金への期待における男女差、③移住中の社会的送金の内容やその実践における男女差、④帰国後の社会的送金の活用やその障壁、社会的費用との相殺に関する男女の相違点について、ネパールおよび日本、クウェート、マレーシアで現地調査を行う。代表者以外に、日本、ネパール、クウェート、マレーシア在住者および移住者団体が研究協力者・協力団体として参加する。 研究方法として、入国管理局の統計などの二次資料と質問紙調査からなる量的調査、またキー・インフォーマント・インタビューやフォーカス・グループ・ディスカッションからなる質的調査の両方を取り入れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の準備として、質問票ならびに研究協力依頼書、同意書などを作成し、上智大学研究倫理委員会で審査を受けて承認を得た。書類はネパール語に翻訳の上、調査用のオンライン・サイトと紙媒体で使用している。 国内では、法務省入国管理局の在留外国人統計、文部科学省学校基本調査の外国人学生調査票、厚生労働省外国人雇用状況などのデータを入手し、ネパールからの移住傾向の分析を行った。一般公開されていない各都道府県の在留資格別、年齢別在留外国人数については参議院議員を通じて情報公開を求めたが、年度末までに回答は得られていない。2016年7月から年度末にかけて、群馬県を対象に事例研究を行った。太田市・大泉町のネパール人移住者組織の協力を得て、フォーカス・グループ・ディスカッションやインタビュー、参与観察によってネパール移住者の特徴や傾向を把握した。質問票調査の回答28件にとどまっている。他に埼玉県川越市でも事例研究の可能性を探った。 マレーシアには2016年6月に質問票のテストを行い、12月の出張時より質問票調査を開始した。現地協力者を通じて、年度末までに85件の回答を得ている。移住者組織やネパール大使館、支援団体、労働組合でも聞き取りを行った。 クウェートでは2017年3月の出張時より質問票調査を開始した。現地協力者を通じて71件の回答を得た。現地では、大学の研究者、ネパール大使館、労働組合の他、多様な職種に就くネパール人移住者およびその家族から聞き取りを行った。 ネパールでは2016年8月に現地協力団体と打ち合わせを行い、11月よりマクワンプール郡で日本、マレーシア、クウェートからの帰国者と移住者の家族に対する質問票調査を行い計240件の回答を得た。 今年度中に調査対象国すべてに出張したことから、年1回の中間報告会を実施できなかったが、調査は概ね計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度7月までに、前年度収集した質問票のデータ集計を終え、8月にはネパールのナワルパラシ郡で帰国者と移住者の家族への質問票調査を実施する。9月以降は、群馬県以外の関東で質問票を行うとともに、各国で収集したデータの比較分析を行う。 移住傾向については概ね把握できる見込みであるが、これまでに収集したデータを見る限り、社会的送金や社会的費用、ならびにその男女差について、明確な違いが浮き彫りにできていない。質問票調査に加えてインタビューを追加で行う必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
3月末のクウェート出張旅費の精算を次年度に回したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
クウェート出張旅費として精算する。
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Research Products
(2 results)